虫歯の予防とフッ素


虫歯の原因が、歯の表面についたプラークの中の細菌が作った酸によるものとお伝えしました。

今回は、虫歯の予防としてよく知られている「フッ素」についてお伝えします。

 

目次

  1. 脱灰と再石灰化についておさらい
  2. フッ素とは
  3. フッ素の効果
  4. フッ素の方法
  5. フッ素配合歯磨き粉の使い方
  6. まとめ

 


1.脱灰と再石灰化についておさらい


脱灰とは

プラークの中の細菌が作った酸によって歯の中のカルシウムが溶け出すことです。

 

再石灰化とは

唾液により酸性が中和されるとカルシウムが歯の中に取り込まれることです。

 


2.フッ素とは


フッ素はミネラルの一種です。

フッ素は私たちの体の中にも含まれていて、体内におけるフッ素の量は鉄よりも多いです。

自然界では海水、河川水、植物、動物などすべてに微量ながらも含まれています。

また、乾燥させた茶葉にも含まれています。

通常の使用で有害性はない自然環境物質です。

 


3.フッ素の効果


①虫歯菌への効果

虫歯菌の酵素の働きを抑制することで、歯を溶かす酸の生成を抑える。

また、糖の取り込みを阻害し、バイオフィルムの原因になる物質(菌体外多糖)を作るのを抑える。

 

②歯への効果

  • ・再石灰化の促進

フッ素は唾液中のカルシウムイオンやリン酸イオンを脱灰によって溶けかかった歯の表面にくっつけてくれます。

それによって歯の表面を表面を修復します。

この作用により、初期の虫歯は治ることがあります。

  • ・耐酸性向上

フッ素は再石灰化の際に、歯に取り込まれ、歯の表面を構成するハイドロキシアパタイトからフルオロアパタイトに変化します。

フルオロアパタイトは酸に強く、エナメル質をより硬く強固な結晶になります。

  • ・う蝕抵抗性向上

歯のエナメル質結晶弱い箇所を修復し、強固な結晶を作る。

 


4.フッ素の方法


効果的なフッ素の利用の原則は「低濃度を高頻度」で使用することです。

歯科医院で高濃度のフッ素を塗布することも重要ですが、それだけでは十分な予防とは言えません。

自宅での使用も予防のために重要になってきます。

特に乳歯や萌出中・直後の永久歯は弱く虫歯になりやすいです。この時期にフッ素を応用することは虫歯予防に有効な手段です。

 

  • ・フッ素塗布

歯に直接塗布し、フッ素を作用させる方法です。

歯科医院で歯科医、歯科衛生士など専門家が直接行います。

乳歯や永久歯の生え代わりの時期に3~4か月に一度のペースで行うのが理想です。

また、塗布後30分間は飲食を控えてください。

 

  • ・フッ素洗口

学校や幼稚園などの施設で集団応用された場合優れた予防効果がみられます。

フッ化物洗口は、比較的低濃度のフッ化物水溶液を頻回ぶくぶくうがいをすることによって、萌出後の歯に直接フッ化物を作用させます。洗口は下を向かずに、まっすぐ前を向いてぶくぶくうがいをします。

 

フッ素の濃度によって行う頻度が変わります。毎日法と週一回法があります。週一回法は毎日法で使用する洗口液より4倍の濃度(900ppm)になり液量も倍(10ml)になります。小学生以上に向いている方法となります。

現在、国内でおよそ127万人の子供たちにフッ素洗口が実施されています。今後も市・県単位での普及拡大が予定されています。

 

  • ・フッ素入り歯磨き粉

家庭でできる最も簡単なフッ素応用法です。

初期虫歯ができた場合でも、フッ素の活用やその他のケアにより再石灰化しやすい状態をつくりだすことで、修復は可能です。初期虫歯が修復されるまでには、半年~1年程度かかるといわれています

 

歯の表面は1日の中で脱灰~再石灰化を繰り返しています。脱灰を抑え再石灰化を促進するために、毎日のケアが重要です。

初期虫歯ができたときに慌てて一時的にケアに気を遣うだけでは、フッ素の効果を十分に発揮できません。
毎日のケアでフッ素をしっかり取り入れ、継続的にむし歯予防に努めることが大切なのです。

 

 


5.フッ素配合歯磨き粉の使い方


  • ・効果的な量

年齢によってフッ素配合歯磨き粉の使用量の目安は変わります。

6ヶ月~2歳    切った爪程度の少量

3~5歳      5㎜以下

6~14歳     1cm程度

15歳~      1~2cm程度(約1g程)

 

  • ・歯磨き後のすすぎ

10~15mlの水を口に含み、1~2回程度すすぐようにすることをお勧めします。口の中により多くのフッ素が残り、むし歯の予防に効果的に働きます。

 

  • ・歯磨き粉は飲み込まない

多くの実験によってフッ素の安全性は確認されていますが、歯磨き粉は食品ではないので飲み込まないようにしましょう。子どもの場合は、ひとりですすぎができるようになってから使用しましょう。

 


6.まとめ


フッ素塗布後、歯の表面では化学反応が起こっています。この化学反応の結果フルオロアパタイトが生成されます。

歯科医院でフッ素塗布を行った後、うがい、飲食をすると、フッ化カルシウムを作るためのフッ素が流れてしまいます。

そのため塗布による予防効果が低下します。

そのため。塗布後30分はうがい、飲食を控えましょう。

万が一うがいをしてしまった場合でも、効果が完全になくなるわけではないのでご安心ください。

また、フッ素入りの歯磨き粉使用後のうがいを少量の水で1~2回を薦めるのも、フッ素が流れ出ないようにするためです。

すすぎを行えない幼児は、うがいを行わないジェルタイプの歯磨き剤があるため、そちらも活用していただけたらと思います。