体を作るための栄養は口から入ってきます。
適切な栄養を食べることはもちろんですが、食べ方(噛み方)を気を付けることも健康な体づくりへとつながります。
本日は「噛むことと健康な体について」お話ししたいと思います。
よく噛むことのメリット
「よく噛むと体に良い」と、聞いたことがあると思います。
- ・肥満予防
- ・糖尿病の予防
- ・オーラルフレイル、口腔機能低下症の予防
しっかり咬むことでこれらが体にとってのメリットとなります。
肥満予防
4~5歳を対象に「食べるスピードとカロリー摂取量」「食べるスピードと肥満傾向」を調べた研究論文があります。
その中で、食べるスピードが遅い子は700KJのカロリーを摂取するのに対し、早い子は1300KJを倍近く多くカロリーを摂取しているという事が分かりました。
そして、食べるスピードの研究に参加した子供のうち早食いの子には体重過多の傾向が見られました。
食べるスピードが速いという事は
「よく噛んでいない」
ということです。
このことから、「よく噛むことでカロリー摂取量を減らすことが出来るのではないか」、と考えられます。
「ひと口10回噛んだとき」と「ひと口35回噛んだとき」で食物摂取量が変わるかを成人を対象に調べた研究があります。
この研究では「ひと口で35回噛んだとき」のほうが食物摂取量が
「12%も減った」
という事が分かりました。
この研究により、100年位前の実業家ホーレス・フィッチャーが提唱した
「いっぱい食べないようにするにはゆっくり噛みましょう」
という健康法が事実と検証されました。
先ほどの研究では「食べ物を口に含む回数」についても調べています。
同じ食事量でも肥満の人は適正体重の人と比べると約20回ほど少ないことが分かりました。
これは、肥満の人は「ひと口量が多い」ということです。
つまり、食べるスピードが速い人は
「よく噛まない」かつ「ひと口量が多い」
ということです。
食べるスピードが速くなると食物摂取量が多くなりその分カロリーも多く摂取してしまうため、「肥満になってしまう」という事が分かります。
糖尿病の予防
〇糖尿病とは
食事を始めしばらくすると、血液中のブドウ糖濃度(血糖値)が上昇し始めます。
それを合図に膵臓からインスリン(糖の代謝を調節し、血糖値を一定に保つためのホルモン)が分泌されます。
細胞の表面にはインスリン受容体があり、インスリンと受容体がくっつくと血液中のブドウ糖を細胞内に取り込むことができ、エネルギー源として利用します。
またインスリンは、余ったブドウ糖(エネルギーとして使用されなかったブドウ糖)を蓄えるためにグリコーゲンや中性脂肪に合成します。
血糖が高くなるような食事を頻繁に行っていると膵臓はインスリンを出すために働き続けます。
働き続けると、インスリンの分泌は徐々に少なくなったり、働きが弱くなったりします。
そして血中の糖を減らす事ができなくなると血中の糖の量が異常に高い状態になります。
これが高血糖、つまり糖尿病といいます。
〇糖尿病の予防の為に
糖尿病の予防のためには異常な血糖値の上昇を予防すること、つまり
「体に入ってくる糖の量を減らすこと」
また、
「糖の入ってくるスピードを緩やかにすること」
が重要です。
「食具による血糖値の上昇率の違い」を調べた研究があります。
この研究では「箸」「スプーン」「指」で比較しています。
この研究により最も遅く、緩やかに血糖値が上昇する食具は
「箸」
という事が分かりました。
箸は一回につまめる量が少なく、必然的にひと口が少なくなり、口に入れる回数も増えます。
そのため咀嚼回数が増え食事時間も長くなり、糖を取り込むスピードが緩やかになり結果的に血糖値の上昇が緩やかになったと考えられます。
オーラルフレイル・口腔機能低下症の予防
口腔機能低下症の症状の中に「咬合力の低下」「咀嚼機能の低下」があります。
これらの機能は噛む訓練を行うことで予防・改善をはかります。
お口の周りの筋肉を鍛えることで他の症状の予防・改善にもつながります。
(詳しくはこちら)
しっかり咬むことを意識して食事をすることでフレイル(体全体の衰え)も防ぐことになります。
(詳しくはこちら)
まとめ
日々の食事の内容だけでなく、食べるスピードや噛み方等食事の方法を気を付けることも健康な体作りに繋がります。
しかし、どんなに気を付けても、噛むための歯がしっかりしていないと食事の満足感や幸福感は得られにくくなります。
これらはフレイルにも繋がってしまうため、注意が必要です。
定期的な歯科受診、歯周病予防のためのクリーニングで歯やインプラントを守り、日々の食事から健康な体作りを意識してみるのはいかがでしょう?