こんにちは。東京都世田谷区北沢にある医療法人社団 燦陽会 下北沢駅前歯科クリニックです。
「奥歯をインプラントにする治療は難しい」と聞いたことがある方もいらっしゃるのではないでしょうか。基本的に、前歯と奥歯ではインプラント治療の難易度は変わりません。治療の難易度を左右するのは主に「骨量」です。
そこで今回は、奥歯をインプラントにするメリットや注意点について解説します。
奥歯の役割とは?
奥歯は第一大臼歯から第三大臼歯までを指し、合計12本存在します。形状が臼に似ていることから「臼歯」と呼ばれています。
奥歯は、食材を噛み砕く能力が高いとされており、特に第一大臼歯は食べ物を噛む際の主要な役割を担い、噛む力が非常に大きいことが特徴です。この歯が欠けてしまうと、噛む力が弱まるだけでなく、全体の噛み合わせも悪化してしまいます。
第二大臼歯は、12歳頃に生え始める歯であり、これが正常に生えないケースが少なくありません。歯が斜めに生えることや、第一大臼歯に当たってしまうことがあるためです。さらに「親知らず」として知られる第三大臼歯は、本来の位置からずれることや、場合によっては、まったく生えないことがあります。
このように、奥歯は特有の特徴と問題をもちながらも、全体的には食べ物を細かくする重要な役割を担っています。
奥歯をインプラントにするメリット・デメリット
奥歯をインプラントにするメリットは、奥歯の役割をそのまま維持できる点にあります。デメリットは、インプラント特有の感染症に注意する点などが挙げられます。ここでは、奥歯をインプラントにするメリット・デメリットを解説します。
奥歯をインプラントにするメリット
奥歯をインプラントにするメリットは、以下のとおりです。
噛み合わせのバランスがよい
ブリッジや入れ歯ではぐらつきや噛み合わせの違和感が生じることがあり、これがほかの歯の破損につながる可能性があります。
しかし、インプラント治療はほかの歯を傷つけるリスクを大幅に軽減します。治療時に噛み合わせのバランスを調整し、さらには定期的なメンテナンスを受けることで、噛み合わせの問題はほぼ避けられるのです。
自然の歯のような噛み心地が実現できる
ブリッジや入れ歯を使用している人はずれたり壊れたりするリスクがあるため、食事を制限している人も少なくありません。
しかし、インプラントは顎の骨に固定されているため、ずれる心配が少なく、力強く噛むことができます。食事を満足に楽しめるだけでなく、食材の味や食感をそのまま感じ取れることにつながります。
骨が痩せるのを防げる
インプラント治療は、顎の骨を健康に保つ効果があります。食事時の噛む力がインプラントを介して顎の骨へと伝わり、骨が刺激を受け続けるからです。
一方で、入れ歯やブリッジは顎の骨への力の伝達がインプラントほど効率的でなく、時間とともに骨が弱くなり瘦せていく傾向が見られます。
きれいな発音が保てる
歯を失うと、すき間から空気が漏れやすくなり、特にイ段の発音の問題を引き起こすことがあります。入れ歯やブリッジは、義歯がずれる場合や歯茎との間にすき間が生じる場合があり、発音に支障をきたすことがあります。
しかし、インプラントの場合、固定後は基本的にずれることがないので、きれいな発音で会話を楽しむことが可能です。
痛みや違和感が少ない
入れ歯やブリッジは、器具がずれたり食べ物が挟まったりすることがあるため、痛みや違和感に悩まされるときがあります。
一方、インプラントは器具と歯茎の間にすき間がなく、ずれることも少ないため、痛みや違和感が少ないというメリットがあります。アバットメントの緩みにより痛みが発生する場合もありますが、歯科医院で調整可能です。また、インプラント治療は入れ歯やブリッジのように器具を作り直す必要もありません。
ほかの歯を傷つけることがない
インプラントは、残った健康な歯を傷つけずに歯の機能を回復できます。
一方、ブリッジは隣接する健康な歯を削る必要があり、虫歯のリスクを増加させることがあります。審美性は保たれるものの、削られた歯が将来的に抜歯が必要になる場合もあるのです。
インプラントはこのようなリスクが低く、健康な歯を保護しながら口内環境を整える効果が期待できます。
見た目がよい
ブリッジや入れ歯使用者の中には、金具やバネが見えることから人前で堂々と笑えない人がいます。
インプラントは審美性に優れ、見た目は自然の歯とほぼ同じなので、口を開けて笑うことも気にならないでしょう。また、被せ物にはセラミックやジルコニアなどを使用するため、歯の色について気にする必要もありません。
奥歯をインプラントにするデメリット
奥歯をインプラントにするデメリットは、以下のとおりです。
インプラント周囲炎に注意する必要がある
インプラント治療後に起こる可能性がある「インプラント周囲炎」は、歯周病菌がインプラントと歯茎の間に侵入し炎症を引き起こす病気です。この病気はインプラントの脱落の危険があるだけでなく、ほかの健康な歯も失うリスクがあります。
治療の際は、歯周病菌の侵入を防ぐための配慮が行われますが、それでも発症を100%防ぐことはできません。インプラント周囲炎の発症リスクを最小限に抑えるためには、定期的なメンテナンスと日々の口腔ケアが不可欠です。
骨量が少ない場合は別の治療が必要になる
インプラント治療を行うには、十分な顎の骨が必須であり、さらに、厚み、深さ、骨密度が関わってきます。
顎の骨が不足している場合、インプラント治療前に骨を増やす処置が必要です。方法はいくつかあり、患者さんの状態や要望に応じて「サイナスリフト」「GBR法」「骨移植」などの治療法が挙げられます。
ただし、これらの治療を受けたあと、すぐにインプラント治療に進めるわけではなく、術後の経過観察が必要です。特に、奥歯は力がかかりやすいため、骨が不足しているとインプラント治療が行えない可能性があります。
治療期間が長い
インプラントの治療期間は3か月~1年程度で、時間がかかる治療法といえます。
これに対し、入れ歯は1~4か月、ブリッジは2週間~1か月の治療期間が見込まれます。
インプラントの治療期間が長い理由は、事前の準備や検討、アフターフォローの丁寧さ、場合によっては骨の成長を待つ必要があるためです。治療期間は、歯が前歯か奥歯かで大きな違いはありませんが、上顎と下顎では異なり、上顎のほうが治療期間が長くなる傾向があります。これは上顎の骨が薄くなりやすく、治療が困難だからです。
治療費用が高い
インプラント治療は健康保険が適用されず、全額自己負担です。治療費は1本あたり30~40万円で、本数が増加すると治療費も増えます。ブリッジとの併用で費用を削減する方法もありますが、最低でもインプラント1本分の費用は必要です。
費用を一括で支払わない場合、ローンを利用できますが、金利分の追加費用が発生するので注意が必要です。
奥歯をインプラントにする治療は難しい?
インプラント治療は、奥歯ならではのデメリットはないといえるでしょう。前歯・奥歯関係なく、治療の難易度は主に患者さんの顎の骨の状態に依存するからです。たとえば、骨量の多い奥歯と、骨量の少ない前歯で比較したとき、このケースでは断然前歯のほうが治療が難しいです。
インターネット上にはさまざまな情報が存在しますが、真実でないものも多く存在します。インプラント治療に疑問や不安がある人は、実際に歯科医師に相談しましょう。
奥歯をインプラントにする場合の注意点
実際に奥歯をインプラントにする場合、いくつかの点に注意しなければなりません。インプラント治療の成功率を高めるには、治療後のケアだけでなく、事前の対策も重要です。ここでは、奥歯をインプラントにする場合の注意点について解説します。
歯科用CTの検査を行っているか
インプラント治療の際、歯科用CT画像による詳細な診断が必要です。上の奥歯を治療する際は、上顎洞(じょうがくどう)という空洞の存在により、骨の高さが不足しやすく、CT画像をもとにインプラントの角度や深さの検討がされます。
一方、下の奥歯を治療するときは、下顎管(かがくかん)内に存在する下歯槽神経や動脈、静脈の位置確認が不可欠です。これは、ドリルで骨に穴を開ける際に下顎管を損傷するリスクがあるためで、事前にCT画像での確認が必須です。
歯科医師の実績を確認しておく
インプラント治療は高度な外科手術を含むため、歯科医院の治療実績が特に重要です。豊富な治療実績があると、さまざまな状況に対応できる可能性が高まります。
歯科医院選びの際は、そのクリニックの年間症例数や治療の内容を確認することが大切です。実績や症例数などは、歯科医院のウェブサイトで公開されていることが多く、事前にチェックしておくことをおすすめします。
リスクを高める行動は控える
インプラント治療前には、合併症やそのほかのリスクを引き起こす要因の排除が重要です。特に、糖尿病や心疾患、骨粗しょう症、貧血などの全身疾患には注意しましょう。
また、喫煙は、骨の結合障害やインプラント周囲炎を引き起こす可能性があります。インプラント治療を受ける場合は、喫煙の有無について担当医師と相談し、必要に応じて禁煙を計画的に進める必要があります。
治療後は定期的なメンテナンスを受ける
インプラントを長持ちさせるためには、治療後の定期的なメンテナンスが欠かせません。歯科医院での定期検診では、インプラントや周囲組織の確認、歯磨き指導やクリーニングが行われ、これによりインプラントの生存率が向上します。
特に重要なのは、インプラント周囲炎の早期発見と治療です。適切な処置が遅れると、インプラントの脱落のリスクが高まります。歯肉の腫れや出血、インプラントの動揺などの症状が現れた際は、早めに歯科医院で受診しましょう。
まとめ
奥歯は噛む力が大きく、噛み合わせの高さを決定する重要な役割を果たしています。奥歯が欠けると、噛む力だけでなく、噛み合わせ全体が崩れる可能性があるのです。
しかし、奥歯を失った場合でも、インプラント治療であれば見た目や口内の健康状態を維持することが可能です。
入れ歯やブリッジは、インプラントに比べて見た目や機能性で劣ります。また、耐久性も高くないため、作り直しが必要になることもあります。
一方、インプラントは、一度治療を受けてしまえば、日々の適切な口腔ケアと定期的なメンテナンスで半永久的に使用可能です。前歯と比較したときに「奥歯のほうが治療は難しい」ということはなく、信頼できる歯科医院を選ぶことでインプラント治療の成功率は高まります。
奥歯のインプラント治療を検討されている方は、東京都世田谷区北沢にある医療法人社団 燦陽会 下北沢駅前歯科クリニックにご相談ください。