歯科による食育のすすめ


前回は食育について、「誰かと一緒に食事をとること」、「朝食を毎日食べること」、「栄養バランスのとれた食事」の良い影響についてお話ししました。

今回は歯科としての観点から食育についてお話ししたいと思います。

 


噛ミング30(カミングサンマル)運動


噛ミング30という言葉を聞いたことがある方もいらっしゃるかもしれません。

一口30回以上噛むことを目標とした厚生労働省が提唱する運動です。

 


よく噛むことの勧め


ひみこのはがいーぜ」という言葉を聞いたことがある方もいらっしゃるかと思います。

よく噛むことのメリットを伝えるためのキャッチフレーズです。

  • ・ひ:肥満を防ぐ

よく噛むことで脳の満腹中枢が刺激されます。

同じ量の食事でも、満腹を感じやすくなるため、食べすぎを防ぎます。

 

  • ・み:味覚の発達

よく噛むことで味を感じやすくなります。

食べ物本来の味を楽しめるようになります。

 

  • ・こ:言葉の発音

成長期によく噛むことで顎の成長を促せます。

成長を促すことで歯並びに必要なスペースを確保しやすくなり、きれいな歯並びにつながります。

また、顔の筋肉を鍛えられるため、表情が豊かになります。

  • ・の:脳の発達

噛む運動は脳細胞の働きを活発にします。

子供の知育、高齢者の認知症予防につながります。

  • ・は:歯の病気を防ぐ

よく噛むことで唾液がたくさん出るようになります。

虫歯や歯周病の予防につながります。

 

  • ・が:がんを防ぐ

唾液に含まれる酵素の一つに発がん性物質の作用を消す働きがあるといわれています。

唾液の量が増えることはその中に含まれる酵素も増えます。

 

  • ・い:胃腸の働き促進

食べ物が口の中にある時にはすでに、胃液や膵液などの消化液は分泌されています。

「おいしい」と感じているときは特に活発に分泌されます。

 

  • ・ぜ:全力投球

ぐっと力を入れて噛みしめると、全身の力が湧いてきたり、集中力が増します。

スポーツ中に噛みこんだとき歯にかかる負担は体重の3倍の力といわれています。

スポーツ選手はもっと大きな負荷がかかります。

しっかり噛んで、虫歯、歯周病がない、よく噛める噛み合わせを目指しましょう。

 


噛む回数が減ってきている


現在、大人も含め、噛む回数が減ってきていることが分かっています。

戦前では約22分の食事時間で1420回噛んでいた食事が現代では11分で620回に減っています。

日本では、食生活の大きな変化(欧米化)も一つの理由にあげられています。

しかし、食生活の欧米化以外にも噛む回数が減った原因と考えられる変化はあります。

  • ・加工食品をよく利用するようになった。
  • ・脂質を含む食品を多く食べるようになった。
  • ・やわらかい食べ物を好むようになった。
  • ・食事の時間が短くなった。

などがあげられます。

食品の加工技術の進歩や、調理器具の発達により、あまり噛まなくても食べることができるメニューが日々の食卓に簡単に用意できるようになったことで噛まなくても食事が行えるようになったと考えられています。

 


噛む回数を増やすために


豆類やわかめなど海藻類、芋類など、噛み応えのある食材を利用してみてください。

また、調理方法も工夫すると噛む回数が増えます。

  • 「切り方」

同じキュウリでも薄切りより、乱切りで調理すると噛む回数は25%も増えることが分かっています。

  • 「加熱時間」

野菜は過熱すると柔らかくなるため、噛む回数が少なくなる傾向にあります。

じっくり煮込むよりサッと煮たり生で食べるほうが噛む回数が増えます。

  • 「水分量」

トンカツを出汁で煮てカツ丼にすると噛む回数は半分以下に減ってしまいます。

  • 「素材を組み合わせる」

野菜炒めなど、多種の素材を組み合わせると必然的に噛む回数は増えます。

 


まとめ


「食事はよく噛みましょう」ということは皆さん聞いたことがあると思います。

それは、よく噛むことにたくさんのメリットがあるからです。

噛ミング30運動を意識してお食事を楽しんでいただけたらと思います。