前回は歯科としての食育の支援としてよく噛むことの大切さ(噛ミング30運動)についてお話ししました。
歯科としての食育との関りとして、噛ミング30以外にも、お口の成長、食べ方の特徴から3ステージに分けて食育を推進しています。
- ・食べ方を育てるステージ(乳幼児期・学齢期)の食育
- ・食べ方で健康を維持するステージ(成人期)の食育
- ・食べ方で活力を維持するステージ(高齢期)の食育
今回は各ステージのポイントについてお話ししたいと思います。
目次
食べ方を育てるステージ(乳幼児期・学齢期)の食育
自分で食べる意欲を促し、歯で噛むことを促す、つまり「自分で食事を行うため」の食育が重要な時期です。
乳児期
授乳、ミルクのとき、しっかり吸う力、飲み込む力、噛む動きを自然と覚えていきます。
そして月齢が進むとストローやコップから水が飲めるように練習を行います。
吸う力、口を閉じる、飲み込む力、食器を口に運ぶ、など、様々な成長があってコップから水が飲めるようになります。
幼児期前半
成長とともに歯が生えてくることで噛み方の違いを獲得していきます。
上下の前歯が生えてくると、前歯を使って噛みちぎることを覚えます
上下の奥歯が生えてくると、奥歯を使い、食べ物をすりつぶすことを覚えます。
硬いもの繊維の豊富な食べ物が食べられるようになります。
〇硬さ・味付けの工夫
初めは噛まずに食べられるドロドロのおかゆやペースト状にした野菜などから始まりますが、少しずつ形のあるものを食べさせられるようになります。
これは歯がなくても、舌で押しつぶすことができるようになるからです。
歯が生え始めた時期に噛む必要の物がないものばかり食べてしまうと、早食いや過食につながってしまうため注意が必要です。
硬さや大きさの異なる様々な食品をゆっくり食べ、薄味でも満足感が得られるような食べ方を推奨しています。
〇食べ方への支援
初めは手づかみで、自分で口に運ぶことができるようになることが大切です。
手づかみにも慣れてくるとスプーン・フォークも使用していきます。
すくうことやこぼさないように口に運ぶ、運ぶ時の口との距離感、など様々なことを覚えて使えるようになります。
乳幼児期後半(乳歯列完成)
幼稚園に入園、集団生活の中での食事が始まり、食べ方のマナーを学ぶ時期になります。
乳歯が生えそろうころになります。
生えそろった乳歯をしっかり使い、食べ物の硬さや大きさ、などに応じた食べ方を学ぶ時期になります。
また、食具としてお箸や、食事の時の左右の手の役割の違いを学び、上手に動かすよう練習の時期でもあります。
小学校低学年(学齢期)
6歳臼歯が出て、前歯の交換がおこなわれる時期になります。
前歯が生えそろったら、前歯で噛みとる食べ方ができるようになります。
また、この時期になってくると、食事のこと、食事に関わることなどについても学べるようになります。
小学校中学年
奥歯が生え変わる時期です。
それに伴い部位による歯の役割の違いや、身体の役割などについて学ぶのに適した時期です。
早食いと肥満との関係や健康な食べ方についても学びましょう。
小学校高学年
奥歯(第二大臼歯)が生えてくる時期です。
左右の奥歯を使ってしっかり噛んで食べるよう促しましょう。
また、噛む力の大きな奥歯が重要な歯で、清潔に保つことの大切さを学ぶよう支援を行いましょう。
中学生、高校生
様々な知識を得て知識を活用できるよう支援を行います。
早食いの危険性、健康的な食べ方を学び実践できるよう支援しましょう。
また、食べ方と消化の関係など体についての学習の支援も重要です。
成人期
生活習慣病と食事の関係について正しい知識をもち、予防する食べ方を行えるよう気を付けましょう。
身体の健康のみならず心の満足も得られる食べ方を目指しましょう。
高齢期
口の周りの筋力低下などが起こらないよう、お口の体操を行い、口腔機能の維持向上を目指しましょう。
また、誤嚥性肺炎の予防のため、日々の清掃をしっかり行うことが重要です。
また、お口の中にトラブルがある場合はしっかり治療し、しっかり食べられるよう意識しましょう。
歯がなくなった場合は噛めるよう治療を行うことが重要です。
まとめ
健康的な暮らしをするために重要な食育ですが、様々な方面からの支援があります。
中には勉強として学ぶこともありますが、日々の食事・生活から、経験していくことが大切なこともあります。
つまり、お子さんにはご両親の支援も重要になります。
健康的な食事を行うにあたり、お口の中に不安なことがあるときはお気軽にご相談ください。