「親知らずが気になっています」
「親知らずは抜いたほうがいいですか?」
このようなお話を患者さんからよく聞く事があります。
本日は親知らずについてお話したいと思います。
目次
1.親知らずについて
親知らずとは正式には第三大臼歯と呼ばれます。
名前の通り3番目にはえてくる奥に生えてくる大きな歯のことで、智歯(ちし)とも呼ばれています。
親知らずは他の歯と同様上下左右1本ずつ、計4本あります。
しかし、もともと親知らずがない場合や、親知らずはあっても歯の生えるスペースの不足や生える向きが通常と異なることによって、出てこないことがあります。
また、出てきても傾いていて半分埋まった状態ということも多く見られます。
レントゲン写真にて
- ・親知らずの有無
- ・親知らずがどのあたりにあるのか
- ・親知らずの向き
を判断します。
親知らずの処置はその時の状態によって変わってきます。
2.親知らずが出てきていない時
先ほどもお話したように、親知らずは全ての方が出てくるわけではありません。
4本全ての親知らずが出てこないこともあります。
親知らずが出てきないない時、定期的にレントゲン写真で確認をとる必要はありますが、そのまま様子を見て問題ありません。
しかしまれに、歯茎に埋もれているけれども、歯茎の腫れや痛みが出ることがあります。
その様な時は抜くこともあります。
3.親知らずが少しだけ出てきた時
レントゲン写真で親知らずがまっすぐ生えてきそうなときは歯茎の炎症が起きないようクリーニングを行いながら経過を追います。
しかし、斜めに生えてきていて、これ以上出てこられない時があります。
このような状態の時、親知らずと手前の歯のぶつかるところは深い溝の様になっています。
その部位は食べかすが入り込みやすく、清掃がほぼ出来ません。
そのため虫歯や歯茎の炎症をおこすことが多いです。
- ①虫歯
親知らずだけでなく手前の歯も虫歯になってしまいます。
そして半分埋まった状態で虫歯の治療を行うことは出来ません。
虫歯を治療せずにそのままにしてしまうと、当然、虫歯は進行します
手前の歯の虫歯が根のほうに進んでいるとその歯を残すことは難しく、手前の歯も抜歯が必要になります。
また、残せたとしても神経をとる処置が必要になり、結果、その歯の寿命は短くなってしまいます。
親知らずが虫歯になってしまうことも良くない事ですが、親知らずがあることで手前の歯を失う可能性が高くなってしまいます。
- ②歯茎の炎症
親知らずの周囲の歯茎の炎症を智歯周囲炎と呼びます。
少し腫れているな、違和感がある、という軽度の症状から、触ると痛い、膿が出てくることもあります。
さらに酷くなると腫れの範囲が広くなり口が明けにくくなったり、顔が腫れてきます。
発熱や倦怠感などの全身の症状が出てくることもあります。
疲れている時や体調が悪い時など免疫力が低下していると重症化しやすくなります。
炎症症状がひどい時はすぐに抜く事ができず、まずは鎮痛薬で痛みを抑えながら抗生物質で炎症を抑える必要があります。
斜めに生えてきてしまっている時は、手前の歯を守るためにも、炎症を起こさせないためにも抜歯が必要になります。
4.親知らずが正常に生えている時
親知らずが完全に生えてくる方ももちろんいらっしゃいます。
完全に生えてきていても抜歯が必要な場合があります。
①抜歯が必要なとき
- ・虫歯になってしまっている時
虫歯の原因は清掃不良です。
親知らずは一番奥に生えてくるため、お口の中でも狭い場所になりやすく、歯ブラシが届きにくくなることがあります。
そのため頬っぺた側や奥側に虫歯を作ることが多いです。
虫歯が出来ても治療をするのに十分なスペースを確保できない場合があります。
その様な場合は抜歯が必要になってきます。
また、奥歯の大変な虫歯の治療が行えた場合でも清掃不良が続けば再度虫歯になる可能性は高いです。
大変な思いをして治療をしても再度虫歯になるリスクを考え抜歯を提案することもあります。
- ・生えている向きが悪い時
親知らずが正常な位置より頬っぺた側から生えていたり、頬っぺた側を向いて生えることがあります。
頬っぺた側に寄ることで、スペースは少なくなり、歯ブラシは届きにくくなります。
そのため清掃不良になりやすくなります。
また、嚙み合わせによっては頬っぺたを咬みやすくなることもあります。
5.親知らずが残っていると
正常に生えてきた健康な親知らずがあると、他の歯を抜いた時の治療方法が増えることがあります。
- ①移植
他の奥歯を抜かなくてはいけなくなったとき、通常であればブリッジ、入れ歯、インプラントで抜いた場所を補う処置を行う必要があります。
しかし、親知らずを抜いた場所に移し入れる移植という方法を行えることがあります。
- ②ブリッジ
親知らずの隣の歯を失った場合、ブリッジの土台の歯として使うことが可能な場合もあります。
- ③矯正
ブリッジ同様隣の歯を失った時、抜いた場所に親知らずを移動させることが可能な場合もあります。
ブリッジだと抜いた歯の両隣の歯を大きく削る必要がありますが、矯正治療では歯を削る必要はありません。
6.まとめ
歯茎の違和感や腫れを繰り返す場合、骨と歯の癒着が強固になってしまいます。
強固な癒着は抜歯を困難にし、体への負担も大きくなってしまいます。
そのため、なるべく早く抜くことをお勧めします。
親知らずは生えてくる年齢が様々です。
また、生えてくる向き、位置が正常でないことも多い歯になります。
お口の中の状況と合わせて治療法を考えていきます。
「親知らずどうしたらいいのかな?」と感じたときは是非一度ご相談ください。