虫歯の原因は歯についた汚れ(プラーク)ということはご存じの方も多いと思います。
今回はプラークについてお伝えしたいと思います。
目次
1.プラークとバイオフィルム
プラークとは、食後8時間ほどで出来上がる細菌の集まりのことです。
バイオフィルムとは、一般的に細菌が固形物や生物の表面などに付着し形成する細菌の集合体のことです。また、細菌が自ら生産した物質(菌体外多糖)に覆われています。そのため、薬剤や、免疫系への抵抗性が上がります。
広い意味で、プラークはお口の中に出来るバイオフィルムとも言われています。
プラークが長時間溜まって膜の様になると、バイオフィルムとなります。
2.プラークと歯
プラークの中の虫歯菌は、砂糖などの炭水化物を分解し酸を作ります。
そのため、プラークの中は酸性になります。プラークが付着している歯の表面も酸にさらされることとなります。
酸性になった歯の表面は、カルシウムが溶け出します。
このカルシウムが溶け出すことを脱灰と呼びます。
しかし、常に脱灰を起こしているわけではありません。
唾液には酸を中和する働きがあります。
唾液によって酸が中和されると溶け出したカルシウムはまた歯に取り込まれます。これを再石灰化と呼びます。
歯の表面では脱灰と再石灰化を常に繰り返しています。
再石灰化が行われるため、プラークが付いていても虫歯が必ずあるわけではないのです。
3.プラークと虫歯
歯の表面の酸性の状態が長引き、歯の表面の脱灰が進むことで、歯の表面が柔らかくなり穴が空いた状態が虫歯です。
酸性の状態が長引く要因として以下のことが考えられます。
- ・唾液の中和する力が弱い、唾液が少ない
唾液には様々な働きがあります。その一つがお口の中の酸性を中和する作用です。 唾液についてはまた別の機会に詳しく配信したいとおもいます。
- ・プラーク(バイオフィルム)の層が厚く、唾液による歯の表面の中和に時間がかかる
プラークを長時間放置し、バイオフィルムが出来ると唾液が歯の表面へ届きにくくなります。、
- ・酸性になる(お食事の)回数が多い・時間が長い
食後唾液の作用によりpHが上がってきていても、お食事のたびにpHは下がります。脱灰の時間が長くなり、再石灰化がなかなか行えません。
このような方は虫歯のリスクが高いです。
また、
- ・歯の抵抗力が弱い
抵抗力が強い方に比べ、脱灰されるスピードが早くなるため、このような方もリスクが高くなります。
4.お食事とプラークのpH
プラーク内のpHは飲食直後から下がり始め、約10分で下限に到達します。そこから唾液の中和の作用により徐々に回復し、およそ60分ほどで元に戻ります。
しかし、pHが戻り切る前に飲食を行うと、またpHはさがります。つまり、脱灰後の再石灰化が行われる前に脱灰の作用時間がながくなります。
ここで、食後すぐにブラッシングを行うと、プラークが除去されることで歯の表面に唾液がふれます。そのため、脱灰が停止し再石灰化が始まります。
5.虫歯と食生活
このように、食事は虫歯と直接の関係があります。
虫歯のリスクを改善するような食生活において、気を付ける事とは、
- 砂糖の量砂糖は細菌が酸を作る材料です。 スポーツドリンクや、缶コーヒーなどにも糖が含まれています。気を付けましょう
- 飲食回数・時間 ダラダラ食べ、頻回飲食は避け、食べる・食べないをはっきり区別し、食べない時間をしっかり確保しましょう。
- 何を食べるか 虫歯になりやすい食べ物かどうか、はお砂糖の量のみで決まりません。歯にくっついて残りやすい物、食べるのに時間がかかるもの、は虫歯になりやすい食べ物といえます。
- ・虫歯になりやすい物
キャラメル:糖分が多く、歯にくっつきやすい
飴:糖分が多く、食べるのに時間がかかる
コーンスナック:糖分は少ないが、歯にくっつきやすい
- ・虫歯になりにくい物
アイスクリーム:糖分は多いが、口の中に残りにくい
プリン:糖分は多いが口の中に残りにくい
おせんべい:糖分は少なく、歯にあまりくっつかない
アイスクリームやプリンなどは砂糖を使ったものですが、口の中には残りにくい食べ物になるため、虫歯には比較的なりにくい食べ物になります。
反対にコーンスナックは口の中に残りやすい食べ物になります。甘い食べ物にはなりませんが比較的虫歯になりやすい食べ物と言えます。
6.まとめ
虫歯の原因は細菌が糖分(炭水化物)を分解するときに出来る酸です。
「酸を作る回数を減らす」、「酸性の時間を短くする」ことが虫歯の予防となります。
これらはお食事に深く関係しています。
規則正しい食生活を送るよう心がけてください。
また、日々のブラッシングでプラークを除去することも大切です。
バイオフィルムについてはまた詳しくお伝えしますが、除去できなかったプラークがバイオフィルムとなってしまった場合、より強固な塊となります。
定期的に歯科医院でクリーニングを行い、バイオフィルムを作らないよう、また出来てしまったバイオフィルムを除去するよう心がけましょう。