歯ぎしり・食いしばり・TCHについて


前回、顎関節症についてお話しました。

顎関節症は顎への負担が大きくなることで引き起こされるとお話ししました。

本日は顎への負担の大きい歯ぎしり、食いしばり、TCHについて詳しくお話ししたいと思います。

 

目次

  1. 歯ぎしり・食いしばり
  2. 上下歯列接触癖(TCH)
  3. まとめ

 


1.歯ぎしり・くいしばり


現在10~20人に一人が歯ぎしりに悩まされている、と言われています。

一言で歯ぎしりと言っても歯ぎしりには何個か種類があります。

①歯ぎしりの種類

・グライディングタイプ

上下の歯を左右に擦るタイプの歯ぎしりです。「ギリギリ」というような音が鳴ります。

主に睡眠中に行われます。

無意識に早く、大きく動かす人が多く見られます。

 

・クレンチングタイプ(くいしばり)

上下の歯に力を強く入れて噛み締めるタイプの歯ぎしりです。

歯に大きな力がかかりますが、音はほとんどしません。

睡眠時のみでなく、日中、仕事中や運動中に噛み締める場合もあります。

自分の体重ほどの力で咬む人もいます。

また、睡眠中に無意識に咬みしめている人は、朝起きた時に歯が浮いたような感じがあったり、あくびをしようとすると、こわばりを感じる事が多いようです。

 

・タッピングタイプ

上下の歯をぶつけあうタイプの歯ぎしり。

「カチカチ」というような音が聞こえます。

グライディングタイプやクレンチングタイプに比べると少ないタイプの歯ぎしりです。

 

・ナッシングタイプ

一部の特定部分だけこすり合わせるタイプの歯ぎしり。

「キリキリ」というような音が鳴ります。

犬歯や前から4番目、5番目の歯の先端が削れることが多いです。

 

②歯ぎしり・食いしばりの症状

〇歯の症状

・歯がすり減る、かける

奥歯の噛む面、前歯の先端が削れていきます。

酷くなるとエナメル質が削れ、黄色い象牙質が見えてきます。

また、歯に力がかかると歯の歯茎付近に力が集中し、歯に窪みができます。

・詰め物が取れやすい、割れる

詰め物に強い力がかかると、歯と詰め物の間にひずみが生じ、取れやすくなります。

また、割れたり、ヒビがはいることも多いです。

・噛むときの痛み

根の周りを覆う歯根膜という膜があります。歯ぎしりによって歯が揺すられると、この歯根膜も傷つくことがあります。傷ついた歯根膜に力がかかることで痛みがでます。

・知覚過敏症状

象牙質は刺激を神経に伝えます。

歯がすり減ったり、かけることでエナメル質に覆われている象牙質が出てくるため、痛みを感じます。

・歯周病の悪化

歯ぎしりをするということは過剰な力が歯だけでなく、歯の周りの骨にも力がかかっていることになります。

歯や骨に強すぎる力がかかると炎症がおこります。

歯周病の時にもお伝えしましたが、炎症は骨を溶かします。

一度失った骨は増やすことはできません。

そのため、過剰な力のかかる歯ぎしりは歯周病の悪化につながります。

 

〇歯以外の症状

・顎関節、筋肉の痛み

・肩こりや頭痛などの全身症状

・骨隆起                                                                                  上顎や下顎にできる硬いコブのようなものです。                                                                過剰な力がかかった時、上下の頬っぺた側の歯茎付近、あるいは上顎の中央、下顎は舌側に出来る異常に発達した骨です。

                                                 一度できた骨隆起は自然に消失することはありません。                                                             また、何か悪さをするものではないため、基本的に処置は行いません。                                                        ですが、発音や食事時に舌の動きを邪魔するなど、著しい障害になっている場合、除去手術を行うことがあります。

・頬粘膜、舌の圧痕                                                                             上下の歯を長時間噛みしめることで頬や舌の側面に白っぽく歯型の跡が残ります。

 

これらの変化や症状がみられる場合は、知らないうちに歯ぎしりをしている可能性があります。

 


2.上下歯列接触癖(TCH)


リラックス時は、上下の歯に隙間ができます。

そして通常、1日24時間のうち、上下の歯が接触しているのは20分といわれています。

しかし、無意識のうちに上下の歯を軽く接触させてしまうことがあります。

これを上下歯列接触癖・TCH(Tooth Contacting Habit)と呼びます。

強い力がかかる噛み締めや食いしばりと違い、弱い力が持続的にかかってきます。

弱い時間でも、長時間作用することで負担がかかり不調の原因となります。

近年ではスマートフォンや携帯電話、パソコンの長時間に及ぶ操作も要因の一つと言われています。

これは、下を向くことで上下の歯が接触しやすくなるため、と考えられています。

 

①TCHの症状

弱い力での歯の接触でも、歯ぎしり・食いしばりと同様の症状が出てきます。

 


3.まとめ


歯ぎしり、食いしばり、TCHは顎関節以外にも様々な症状を引き起こす原因となります。

不調を感じなくても歯が削れるなどの変化は起こっているかもしれません。

そして、悩み事が多い時やストレスを感じている時に歯ぎしりや食いしばりは増えます。

ストレス状態を長引かせないよう、「一日のうちどこかでリラックスタイムを作る」などご自身のストレス解消法を見つけて実行してみてください。

深呼吸はどこでも簡単に行える手軽なストレス解消方法です。

寝る前や、日中食いしばりをしていることに気付いた時は深呼吸を行ってみて下さい。

改善策・治療法についてはまた次回お話しようと思います。