これまで、様々な種類のマウスピースについてお話してきました。
本日はスポーツの時に使用するスポーツマウスピース(マウスガード)についてお話したいと思います。
目次
1.スポーツと噛み合わせ
実は歯の健康や噛み合わせはスポーツのパフォーマンスに影響を与えています。
2011年に「スポーツ基本法」という法律が施行されたのですが、その中の「スポーツに関する科学的研究の推進等」という項目の中には、歯科が含まれました。
現在噛むこととスポーツの関係性についての研究が進められています。
2.スポーツ中に噛むことで起こること
①筋力が増える
重い物を持つとき噛みしめたり、口の周りに力が入ることがあると思います。
歯をしっかり噛みしめることで筋力が4~6%ほど上がると言われています。
②重心、姿勢の安定
歯を噛みしめると首の筋肉に力が入り、首が安定します。
首が安定することで体の軸がぶれにくくなります。
また、視線もぶれにくくなるため、パフォーマンスの向上につながります。
奥歯でしっかり噛みしめると、走っている時の軸のブレや、ジャンプをした時の空中での姿勢、瞬発力に差が出ます。
③集中力・判断力の向上
噛むことで、脳への血流が良くなり、集中力・判断力が高まります。
3.スポーツマウスピースとは
お食事中の歯には、自分の体重と同じくらいの負荷が瞬間的にかかっていると言われています。
スポーツ中に思いっきり食いしばると、体重の3倍の力が歯にかかると言われています。
プロのスポーツ選手の場合、瞬発的にもっと大きな力がかかってきます。
プロの野球選手は歯がボロボロの方が多いと聞きます。
フィギュアスケーターの浅田真央さんも、ジャンプの時に奥歯が欠けることがあったと話したことがあります。
1日で上下の歯が接触しているのは正常な場合15分と言われています。
スポーツをしていると普段よりも強い力で、長い時間歯が接触していて、それだけ歯に大きな負担を与えていることになります。
その歯への負担を軽減することができるのがスポーツマウスピースです。
4.スポーツマウスピースの効果
①歯の破折を防ぐ
球技や道具を扱うスポーツの場合、ボールやバットなどの道具が口元に当たるリスクがあります。
また、格闘技などのスポーツでは奥歯に肘や頭が当たることがあります。
特に前歯は歯が欠けたり、折れたり、抜けることもあります。
神経のお部屋に到達するぐらい大きく欠けることや、ぶつけた衝撃で神経が徐々に弱り死んでしまうこともあります。
そのような時は神経を取る処置が必要になります。
以前もお話したことがありますが、神経を取った歯は割れやすくなります。
骨の中で根っこが折れてしまうこともありますが、根が折れてしまった歯は使い続けることは出来ないため、抜くことになります。
奥歯の場合大きく破損することは少ないですが、小さな欠けも、歯のざらつきや、欠けた所に汚れが溜まりやすくなってしまい虫歯のリスクが上がってしまいます。
また、小さなかけも繰り返すと欠けは大きくなっていきます。
スポーツマウスピースはこのようなリスクから歯を守ってくれます。
②歯によるお口周辺の怪我を防ぐ
スポーツ中大きな力が顎などに加わると歯によって怪我をすることがあります。
お食事中、舌やほっぺを嚙んでも、反射反応で思いっきり噛みこむことはないため、大きなけがにつながることはあまりありません。
しかし、スポーツ中に急な大きな力がかかると反射反応で噛みこみをコントロールすることが出来ず大きく噛みこんでしまうことがあります。
舌やほっぺ、唇を深く切ってしまったり、酷いと噛み切ってしまうこともあります。
マウスピースを使用すると歯の鋭利な部分はなくなるため、怪我を防ぐ事ができます。
③脳震とうの予防
脳震とうとは頭が強く揺さぶられることで、意識をなくしたり、記憶をなくしたりすることです。
格闘技等で、大きな力で顎を下から突き上げると、力が関節に伝わり、頭が強く揺さぶられ、脳震とうを起こしてしまいます。
噛みこむことで首の筋肉を使い、頭が揺さぶりにくくなると考えられています。
さらに、マウスピースを使用すると骨や歯から頭にかかる振動に干渉し脳震とうを起こしにくくするとも考えられています。
5.まとめ
道具を使用するスポーツや、打撃や、体同士ぶつかり合うようなスポーツ(ラグビー、アメリカンフットボールや、女子ラクロスなど)ではスポーツマウスピースの使用が義務づけられています。
装着が推奨されるスポーツ(野球やバスケットボールなど)もありますが、まだそこまで浸透しているとは言えません。
パフォーマンスの向上のためにしっかり噛みしめるためには健康な歯は重要です。
歯を守り、怪我を防ぐことができるスポーツマウスピース、パフォーマンスの向上のために使用してみるのはいかがでしょう?
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