インプラント手術の流れ|安心して治療を受けるために知っておくこと


こんにちは。東京都世田谷区北沢にある、医療法人社団 燦陽会 下北沢駅前歯科クリニックです。

インプラントが埋め込まれた歯の模型

インプラントは、入れ歯などとは異なり、まるで自分の歯のように違和感なく食事を楽しめ、見た目も美しく整えられる治療法です。

しかし、保険が効かず治療費が高額で、インプラントの手術が不安な方も多いのではないでしょうか。

そこで、この記事では、インプラントの手術の流れについて詳しく解説します。手術を安心して受けられるように、知っておくべきことと、知っておくことで回避できるリスクについても説明します。この記事を読んで、インプラント手術に対する漠然とした不安や疑問が解消し、安心して手術に臨みましょう。

インプラント手術の種類

歯と時計と歯医者の治療器具

インプラントの治療で行う手術の方法には「1回法」と「2回法」の2種類があります。どちらの手術を行うかは、事前のカウンセリングや診察で、顎の骨や歯槽骨、口の中の状態を確認してから十分な相談を行ったあとに決定されるでしょう。

治療に使われるインプラントは、基本的に下記の3つのパーツで構成されます。

・あごの骨に埋め込むインプラント体(人工歯根)

・外から見える白い歯の部分の人工歯(上部構造)

・インプラント体と人工歯を連結し、人工歯を取り付ける土台となるアバットメント(支台)

(インプラント体とアバットメントが一体化したインプラントもあります。)

「1回法」は、1回の手術であごの骨にインプラント体を埋め込んだあと、インプラント体の上部を歯肉から露出したまま治癒期間を過ごすため、手術は1回で済みます。

「2回法」は、1回目の手術であごの骨にインプラントを埋め込んだあと、インプラント体の上部を歯肉で覆った状態で治癒期間を過ごします。そのため、インプラント体にアバットメントを取り付けるために、2回目の手術で歯肉の切開を行い、インプラント体を歯肉から露出させる必要があるのです。

上述の2種類の方法について、さらに詳しく解説します。

インプラント手術「1回法」(粘膜貫通型)の流れ

インプラント手術の「1回法」は、インプラントの治療過程で、手術を1回だけ行う方法です。インプラントを入れる部位のあごの骨のボリュームと、硬さが充分にある場合に選択されます。

インプラント手術「1回法」の流れは、下記のとおりです。

  1. 歯肉を切開しインプラントを埋め込む位置を決定します。
  2. 専用ドリルを使用して、あごの骨に治療計画通りの角度や深さで穴を開けます。
  3. インプラント体(人工歯根)を穴に埋め込みます。
  4. インプラント体にヒーリングアバットメント(仮のフタ)を取り付け、歯肉からインプラント体の先端が露出するように縫合します。
  5. 治癒期間のあとに、インプラント体と骨がしっかりと結合したら、人工歯(上部構造)を装着します。

インプラント手術「2回法」(完全埋入型)の流れ

インプラント手術の「2回法」は、インプラントの治療過程で「1次手術」と「2次手術」の2回の手術を行います。

インプラント手術「2回法」の流れは、下記のとおりです。

【1次手術】

  1. 歯肉を切開しインプラントを埋め込む位置を決定します。
  2. 専用ドリルを使用して、あごの骨に治療計画通りの角度や深さで穴を開けます。
  3. インプラント体(人工歯根)を穴に埋め込みます。
  4. インプラント体にカバースクリュー(ネジ式のフタ)を取り付け、インプラント体とカバースクリューが歯肉で完全に覆われるように縫合します。

【2次手術】

  1. インプラント体を埋め込んだ部位の歯肉を切開します。
  2. インプラント体に取り付けられているカバースクリューを外します。
  3. インプラント体にヒーリングアバットメント(仮のフタ)を取り付け、歯肉からインプラント体の上部先端が露出するように縫合します。
  4. 切開・縫合した部位の歯肉が治癒したら、インプラント体からヒーリングアバットメントを取り外し、代わりにアバットメントを取り付け、その上に人工歯を装着します。

インプラント手術の流れ

歯の模型とタブレットの前説明を受けている

手術前に必要なカウンセリングや診察からアフターケアまで、インプラントの手術に付随する大きな流れも合わせて詳しく解説します。

カウンセリング

カウンセリングでは、インプラントを希望するに至った経緯(歯の悩みなど)や治療に対する希望や質問などを伝え、インプラントの治療や手術の流れやメリット・デメリット、リスクなどについて説明を受けます。糖尿病や骨粗しょう症などの病歴、血液をサラサラにする薬や骨粗しょう症の薬など、服用中の薬がある場合は必ず伝えましょう。

十分に納得してから、次のステップの「診察」を受けるようにしましょう。

診察

インプラントの手術では、正確にインプラント体を埋め込む必要があります。診察では、歯科用のCTやレントゲン撮影、口内の状態の確認などを行います。そして、CTの3Dデータをもとに、あらゆる角度から確認可能な3D画像をモデリングして、精密な治療計画の作成を行います。

CT撮影で手術部位が正確な3D画像によって可視化されるため、インプラント体を埋め込む角度や深さなどを正確にシミュレーション可能です。また、レントゲンでは影になって見えない部分なども、CTの3D画像であらゆる方向から確認できます。神経や血管、手術部位の位置関係も事前に把握することができるのです。結果として、手術中に神経を傷つけて後遺症が残ったり、血管を傷つけて大出血をおこしたりするリスクが低下し、安全で確実なインプラント手術を行えるでしょう。

なお、インプラント後に「インプラント歯周炎」にならないように、手術前に歯周病の検査を行い、必要に応じて事前に歯周病の治療を行います。

診断と治療計画の提案

診査の結果をもとに、診断と治療計画の提案を受けます。

この時点でわからないことがあれば質問して、しっかりと納得してから、次のステップ「インプラント手術」に進みましょう。

インプラントの手術と治癒期間

手術は通常、前述の「1回法」か「2回法」で行われます。

インプラント体の埋め込み手術にかかる時間は、本数にもよりますが、数十分から1時間ほどが目安です。治癒期間は通常は6~8週間、骨を回復する治療も行っている場合は3か月~6か月ほどかかります。

仮歯の装着

仮歯は、インプラント体があごの骨や周辺組織としっかり結合して、人工歯を装着するまでのつなぎとして装着されます。

また、仮歯は、下記のように重要な役割も果たしています。

・人工歯を装着するまで、歯がない部分をカバーし、見た目の美しさを保つ

・かみ合わせを良好に保ち、歯並びが歪まないようにする

・あごの骨や歯茎の状態を良好に保つ

・外部からの刺激や細菌の侵入による影響を少なくする

型取りと人工歯の装着

インプラント体がしっかりとあごの骨に結合し馴染んで、歯肉の状態も良好になれば、型取りを行い、人工歯を製作し装着します。

アフターケア(定期的なメンテナンス)

インプラントの治療が終了したあとも、定期的に歯科医院で口内の状態をチェックし、必要に応じてメンテナンスを行います。

ふだんの生活でも、歯磨きや歯間ブラシなどを使用しましょう。アフターケアを継続してしっかりと行うことで、インプラントを自分の歯のように長く使い続けることができます。

インプラント手術の注意点

インプラントの模型を持っている白衣を着た女性

インプラント手術は決して安くはありません。手術を無事に完了するために、手術前・手術当日・手術後それぞれの注意点をしっかり守りましょう。

インプラント手術前の注意点

インプラント手術前の注意点について詳しく解説します。

持病や服用中の薬について

インプラントの手術と相性の悪い病気やお薬があるため、持病や服用中の薬の情報を歯科医師にしっかりともれなく伝えるようにしましょう。

たとえば、糖尿病では、免疫機能が低下しているので感染症にかかりやすく「インプラント周囲炎」のリスクが上がります。また、血液をサラサラにするお薬(抗凝固剤:ワーファリンなど)は手術中の出血のリスクが上がり、骨を強くするお薬(骨粗しょう症のお薬:ビスホスホネート製剤など )は顎骨壊死のリスクがあるでしょう。

上記のほかにもインプラント手術と相性が悪いケースがあるので、歯科医師にしっかりと病歴や服用中のお薬の情報は伝えておきましょう。

体調について

風邪をひいたり、疲れたりしないように体調を整えましょう。

タバコについて

タバコを吸うと口の中の血行が滞り、手術に悪い影響を与えます。インプラント手術を行う前に禁煙しましょう。

インプラント手術当日の注意点

インプラント手術当日の注意点を詳しく解説します。

来院方法について

インプラントの手術では麻酔を使用します。当日の車の運転は控えましょう。

手術前のトイレについて

手術をスムーズにすませるために、手術前にトイレをすませておきましょう。

服装や化粧について

服装は、汚れてもよく、サイズ的にもゆとりのあるものを着用しましょう。また、化粧は控えめにし、指先に測定器具などを装着できるように、マニキュアは落とす必要があります。

食事について

麻酔などの関係で、手術前の食事について時間の指定があればしっかり守り、適度な食事をとりましょう。また、インプラント手術中にトイレに行きたくならないように、コーヒーや濃い緑茶など、利尿作用のあるカフェインを含む飲み物は控えましょう。

歯磨きについて

汚れや食べかすなどが残らないよう、歯磨きを丁寧に行い、清潔な状態でインプラント手術に臨みましょう。

インプラント手術を受けた直後~1週間の注意点

インプラント手術を受けた直後~1週間の注意点について詳しく解説します。

食事について

手術直後の2時間程度は麻酔が効いているため、感覚が鈍ります。舌や頬の内側を噛んでしまうことがあるので、飲食は控えましょう。

インプラント手術後2~3日は、手術部位を刺激するような極端に熱いもの、冷たいもの、辛いものなどは控え、柔らかいものを食べましょう。また、手術部位と反対側で咀嚼することをおすすめします。

出血について

清潔なガーゼを手術部位で噛んで、少し血がにじむ程度であれば問題ないですが、数時間出血が続くようなら、早めに歯科医師に相談しましょう。

青あざについて

インプラント手術後、アゴや頬、首などに青いあざが現れることがありますが、10日ぐらいで徐々に消えていくので心配はいりません。

歯磨きについて

術後は、うがい薬などでやさしくうがいを行います。手術部位とその周辺のブラッシングは控えましょう。

手術部位について

手術部位が気になっても、舌や指などで触れないように気をつけましょう。

処方された薬について

インプラント手術後に処方される抗生物質は自己判断で服用を中止せずに、用法・用量の通りに飲みきりましょう。また、痛みがある場合には、我慢せずに処方された痛み止めを飲みましょう。

飲酒と喫煙について

飲酒と喫煙は控えましょう。

飲酒は、血の巡りがよくなり、腫れや痛み、出血しやすくなることがあります。また、喫煙は口内の健康に悪い影響をあたえ「インプラント周囲炎」のリスクにつながります。

運動や入浴について

腫れや痛みがあるうちは、運動は控えましょう。入浴については、湯船に浸からず、シャワーで済ませることがおすすめです。

インプラント手術のリスク

RISKと書かれた紙を破いているビジネスマン

インプラント手術の際のリスクは事前に知っておくことが重要です。最後に、インプラント手術のリスクについて解説します。

持病や服用しているお薬について

先述しましたが、持病や服用しているお薬がインプラント手術と相性が悪い場合があります。病歴や服用中のお薬に関する情報は、歯科医師にしっかりと伝えておきましょう。

人為的ミスについて

手術中に、大切な神経や血管を傷つけてしまう、インプラントの埋め込み位置が不適切だったなどの可能性はまったくないとはいいきれません。人為的ミスのリスクについても、歯科医師からしっかりと説明を受けましょう。

インプラント周囲炎について

インプラント体の周囲の骨が溶けて、短期間でインプラントが使えなくなる大きな原因が「インプラント周囲炎」です。手術前に歯周病の治療を完了しておく、インプラント手術後のアフターケアを入念に継続することで、「インプラント周囲炎」のリスクを下げることができます。

インプラントが骨になじまないことについて

あごの骨に埋め込んだインプラント体が周囲の骨と結合せず、なじまないことがあります。

審美的な問題について

インプラント手術後に歯茎が痩せた場合、薄くなった歯茎の内側からインプラントの土台部分が透けて、歯茎が黒ずんで見えることがあります。

金属アレルギー

あごの骨に直接埋め込むインプラント体は、骨となじみやすく、金属アレルギーが出にくいチタン素材で作られています。アレルギー体質や金属アレルギーが心配な方は、事前に歯科医師に相談し、皮膚科でアレルギーの検査を受けましょう。

まとめ

前歯にインプラントが埋め込まれている女性

今回は、インプラント手術の流れ、手術を成功に導くためのポイントを解説しました。

インプラント手術は高額なこともあり、なるべく長持ちさせたいと思う方が多いでしょう。インプラント手術は、完了すれば終わりですはありません。術後は「インプラント周囲炎」のリスクも存在します。この記事を参考に、手術後も適切なケアやメンテナンスをおこない、インプラントの歯を長持ちさせましょう。

インプラントを検討されている方は、東京都世田谷区北沢にある、医療法人社団 燦陽会 下北沢駅前歯科クリニックにご相談ください。