こんにちは。東京都世田谷区北沢にある医療法人社団 燦陽会 下北沢駅前歯科クリニックです。
インプラントは、歯を失ってしまった際に顎の骨に埋め込む「人工歯根」のことです。人工物なので、インプラント自体は虫歯などにはなりませんが、インプラント周囲組織が炎症を起こす「インプラント周囲炎」を引き起こしてしまう可能性があります。インプラント周囲炎になると、最悪の場合インプラントが使えなくなってしまうことがあります。
今回は、インプラント治療をした際に「インプラント周囲炎」を引き起こさないために、インプラント周囲炎の症状や原因、対策などを詳しく解説します。
目次
そもそもインプラント周囲炎とは
インプラント周囲炎とは、インプラント周囲の歯茎やインプラント体を支える骨が歯周病菌に感染した状態を指します。天然の歯でいうところの「歯周病」です。
インプラントは人工歯根のため、天然の歯に比べて炎症への抵抗力が10倍から20倍も弱くなるといわれています。一度感染すると急速に進行してしまうので注意しなくてはなりません。進行すると、インプラントがグラグラと動くようになり、場合によっては抜去する必要が出てきてしまいます。
インプラント治療をしたあとは、インプラント周囲が歯周病菌に感染しないよう予防をしていくことが大切です。
インプラント周囲炎の症状
最初は「インプラント周囲粘膜炎」という周囲の歯茎の赤みや腫れなどの症状から始まります。次第に、炎症が粘膜だけでなく歯槽骨にまで広がった「インプラント周囲炎」に進行します。それぞれの症状をみていきましょう。
インプラント周囲粘膜炎の症状
インプラント周囲炎の初期段階で、炎症が周囲の歯茎に限局している状態です。
歯茎の赤みや腫れがみられます。歯をみがいた時に出血をして気が付くこともあります。
しかし、痛みなどがないことも多いため、炎症が起きていることに気が付かないこともあるので注意が必要です。自覚したときには既にインプラント周囲炎になっていることも多いので、歯茎からの出血などに気がついたら早めに受診をするようにしましょう。
インプラント周囲炎の症状
インプラント周囲粘膜炎が進行し、炎症が歯茎から歯茎を支える「歯槽骨」にまで波及した状態です。
歯槽骨の炎症が進むと、次第に骨が溶けてきてしまいます。歯茎の腫れや出血に加えて、歯茎から膿が出ることや、インプラント自体に痛みや違和感が出てきます。
溶けてきてしまった歯槽骨は、元には戻りません。そのまま炎症が進み続けると、インプラントを支えられなくなり、インプラントのグラつきや脱落が起こります。
インプラント周囲炎の原因
インプラント周囲炎の最大の原因は「歯周病菌」です。お口の中が不衛生な状態になり、歯周病菌が増殖することによって引き起こされます。
歯磨きがきちんとできていないと、歯周病菌は増殖してしまいます。歯科医院の定期的なメンテナンスを受けていない場合も、落としきれない汚れが溜まってしまうので、注意が必要です。
また、インプラント周囲炎は、お口のケアの問題だけではなく、全身の病気や生活習慣とも関わりがあります。次のような要因がある場合には、特に注意が必要です。
喫煙習慣がある場合
タバコに含まれるニコチンは、血管を収縮させる作用があるため、血流が悪くなります。そのため、栄養が行き届かず、免疫力が低下します。
インプラントは、天然の歯に比べて歯周病菌への抵抗力が弱いです。インプラント治療を希望する段階で喫煙していると、治療を行うことができない場合もあるので覚えておきましょう。
糖尿病がある場合
糖尿病の影響で血糖値が高いと、細菌に対する抵抗力が弱くなります。歯周病菌も同様です。
糖尿病の場合、インプラント治療自体が行えない場合があリますが、血糖値のコントロールができていれば、インプラント治療を行うことができる場合もあります。インプラント治療を行うことができた場合には、インプラント埋入後も、糖尿病のコントロールを引き続き注意していく必要があります。
貧血がある場合
血液には、病気を治すための白血球や栄養を運んでくれる役割があります。貧血がある場合は、免疫力が低下して、歯周病菌に感染しやすい状態になるので注意が必要です。
貧血の受診もしっかりと行い、必要であれば服薬するようにしましょう。
歯ぎしりや食いしばりの癖がある場合
歯ぎしりや食いしばりの癖がある場合、歯に必要以上に大きな負荷がかかっています。
インプラントに大きな力がかかると、インプラント周囲炎を進行させてしまうおそれがあります。
ほかの歯の歯周病が完治していない状態でインプラント治療を受けた場合
インプラント治療をする場合には、基本的にほかの歯の歯周病が完治している必要があります。ほかの歯に歯周病があると、口の中は歯周病菌が繁殖している状態になるため、インプラントも感染しやすいからです。
万が一、ほかの歯に歯周病がある状態でインプラント治療を受けてしまうと、その後のインプラントのケアが大変になりますので歯科医師と相談してください。
インプラント周囲炎になったらどうする?
インプラント周囲炎になってしまった場合の治療法には、歯周ポケット内を洗浄などして回復を促していく「非外科的治療」と、歯茎を切開して手術を行う「外科的治療」の2種類があります。
また、インプラント周囲炎は、歯科医院内で行う治療だけでは改善しません。丁寧なブラッシングなどの生活習慣は、患者さん自身が毎日ご自宅で行わなければなりません。
非外科的治療
まずは外科的手術を行わずに、治癒させていく治療法を行います。歯科医院では次の治療が行われます。
・周囲の歯石除去
・歯周ポケット内洗浄と薬剤の注入
・抗生物質の投与
・歯みがきや生活指導
上記の治療を基本とし、インプラント周囲の炎症を抑えていきます。自宅では落としきれない汚れを除去し、インプラント体と歯茎との間にできた歯周ポケット内の洗浄を行うのです。
また、自宅での歯みがきや生活習慣の指導を行い、適切なケアを行えるようサポートしていきます。
外科的治療
歯槽骨の吸収が進んでいる場合には、外科的治療を行います。
歯茎を切開して、インプラント体に直接アプローチをする方法で、インプラント表面の清掃や殺菌を行います。骨の吸収が進行して、骨の再生が必要な場合には骨移植を行い、メンブレンという膜で覆って骨の再生を図ることになるでしょう。
これらの方法を行ってもインプラント周囲炎が改善されないこともあります。そのような場合は、インプラントを摘出しなくてはなりません。
インプラント周囲炎の予防法
インプラント周囲炎を予防するために、インプラント治療後は、次のことをしっかりと行うようにしましょう。
セルフケアの徹底
インプラント周囲炎の最大の原因は、歯周病菌です。
歯周病を防止するためには、毎日の丁寧なブラッシングがとても大切です。歯の表面だけでなく、歯と歯茎の間を意識してみがきましょう。インプラントの場合は、人口歯の根本部分がくびれているので、特に注意して磨く必要があります。
自己流でみがいていると、なかなか効率よく汚れが落ちないことがありますので、歯科医院のブラッシング指導を受けるのがおすすめです。
歯科医院で定期的なメンテナンス
インプラント治療を受けたら、定期的なメンテナンスは必要不可欠です。
定期的にインプラント周囲炎に罹患していないかチェックをしてもらい、自分では落としきれない汚れを除去してもらうようにしましょう。
生活習慣の改善や全身の病気のコントロール
インプラント周囲炎が進行する原因となる習慣を改善すれば、予防につながります。特に喫煙は、インプラントにとっては非常にリスクが高い要因です。全身の健康にも悪影響がありますので、禁煙を検討するようにしましょう。
歯ぎしりや食いしばりのくせがある場合には、起床時は意識して顎を緩め、就寝時はマウスピースを装着するなどの対策をするのがおすすめです。また、糖尿病や貧血などの持病がある場合には、内科主治医の受診をきちんと定期的に行い、病気のコントロールをすることが大切といえるでしょう。
まとめ
インプラント周囲炎は、一度罹患してしまうと治療がとても大変です。そのため、インプラント周囲炎になる前に予防をしていくことが大切です。予防には、自宅で行うセルフケアのほか、定期的に歯科医院に通院する必要があります。
これからインプラント治療を検討する場合には、定期的にメンテナンスを受けることが必要だということを、あらかじめ理解しておくようにしましょう。
インプラント治療を検討されている方は、東京都世田谷区北沢にある医療法人社団 燦陽会 下北沢駅前歯科クリニックにご相談ください。