これまでに数回、歯周病菌と全身の疾患との関係についてお話しました。
近年の研究で歯周病菌と癌も関係があることが分かってきました。
本日は歯周病菌と癌についてお話したいと思います。
(歯周病と認知症、早産、動脈硬化、脳梗塞・心筋梗塞についてはこちらをご覧ください)
癌とは
細胞には、細胞の増殖や細胞の死をコントロールする能力が備わっています。
(正確には細胞の中の遺伝子情報の中にその役割が組み込まれています。)
そのため正常な細胞は体の状態に合わせ増えたり、増えるのをやめたりしています。
正常な細胞が細胞分裂を行う際に、遺伝子に傷(遺伝子の変異)がつくことがあります。
変異した細胞は細胞の増殖をコントロールが出来なくなることがあります。
抑制することができなくなり、変異した細胞が増殖してできた塊を「腫瘍」と呼びます。
腫瘍には細胞の増え方や広がり方の違いから、良性腫瘍と悪性腫瘍に分けます。
悪性腫瘍とは、細胞が無秩序に増えながら周囲の組織にしみ込むように広がったり(浸潤)、血管などを介してからだのあちこち(転移)に広がります。
「癌」とはこの悪性腫瘍のことになります。
癌は体に様々な悪い影響をもたらします。
死亡原因の一位はこの癌になります
また、癌の恐ろしいところは完治したと思っても、また腫瘍が現れる(再発)ことです。
癌と免疫細胞
人の体は約60兆個の細胞から作られており、その2%(1兆個以上)の細胞が毎日入れ替わっています。
その中には癌になる可能性のあるミュータント細胞が数千個含まれています。
このミュータント細胞は体の中にいらない細胞です。
免疫細胞は体内に侵入した細菌を排除するだけでなく、自分の体の中で生まれた癌になるかもしれない細胞も攻撃し、体の健康を守ってくれています。
高齢になるとがんの発症が増加するのはミュータント細胞を攻撃する免疫機能が年齢により低下するためです。
また、若い人は免疫機能はしっかり機能していますが、若さゆえに細胞分裂が活発に行われるため、癌の進行が速いと言われています。
フソバクテリウム(歯周病菌)と免疫細胞
歯周病菌の中にフソバクテリウムという菌がいます。
この菌は強烈な口臭の原因となる酪酸を作ります。
さらに、フソバクテリウムは増殖すると、酪酸や硫化物(こちらも口臭の原因です)によって免疫細胞の働きを混乱させてしまいます。
フソバクテリウムと癌
歯周ポケットにいるフソバクテリウムが、歯周病によって出血した場所から血管内に入こみます。
体内に入り込むと免疫細胞をかく乱し、免疫細胞の働きを弱めます。
働きの弱まった免疫細胞は癌化の可能性のあるミュータント細胞を抑えきれなくなり、食道がんや大腸がんを発症します。
また、癌になった細胞にフソバクテリウムが感染すると癌細胞を増殖させることが分かりました。
癌の進行が早くなったり、転移も多いという事が近年の研究で明らかになりました。
癌細胞の中とお口の中のフソバクテリウムを調べるとDNAパターンが同じ、つまり、癌細胞の中の菌とお口の中の菌が同じ個体から増えた菌ということが明らかになりました。
まとめ
大腸がんは男女ともに罹患率が2番目に多い癌になります。
進行は遅く、治癒率も高いと言われていますが、発症したくない、と皆さん感じていらっしゃると思います。
お口の中のフソバクテリウムを減らすと癌のリスクを下げる事が出来ます。
歯周病の治療をするだけで、お口のケア、その他疾患の予防、さらには癌の予防も出来てしまいます。
健康のために禁酒、禁煙、適度な運動を心がけている方もいらっしゃるかと思います。
お口のケアも含めてみるのはいかがでしょうか?