気候(気圧)と歯の痛み


「頭が痛いな・・・天気のせいかも・・・」

「関節が痛くなってきたから、雨が降るのかも」

このようなことを聞いたこと、実際に感じている方もいらっしゃるかと思います。

これは、気候(気圧)の変化が体に影響を与えているからです。

この気圧の変化は、歯にも影響を与えています。

本日は「気候(気圧)と歯の痛み」についてお話したいと思います。

 

「雨が降ると歯が痛む」は昔から言われていた


この現象は現代に始まったことではなく、江戸時代からすでに言われてきました。

江戸時代や明治時代の文化人の記述にもみられます。

天気と歯の痛みについて頻繁に登場する日記があります。

この日記は江戸時代から明治時代初期に活躍した、ある作曲家がつづったものです。

太宰治がこの日記をもとに「盲人独笑」という作品を発表したことで、多くの人に読まれることとなりました。

 


気圧とは


気圧とは空気による圧力のことです。

人の身体を含め、全ての物体には常に全方位から気圧の影響を受けています。

人の身体が気圧によって押しつぶされないのは、気圧と同じ力で身体の内部から押し返し、押しつぶそうとする力を消しあっているからです。

高い山にポテトチップスの袋を持っていくと、パンパンに膨れる事をご存じの方も多いかと思います。

これは、袋詰めした場所よりも気圧の低いところに持っていたことで、袋の中の気圧と外の気圧に差が生じることで袋の中の空気が膨れるからです。

人の身体も、同様に日々の気圧の変化に影響を受けます。

低気圧になると身体の中ある空洞や血管などの管などが膨らみます。

膨らんだ空洞や血管が神経などを圧迫しやすくなり、頭痛などの痛みを引き起こすようになります。

 


気圧の変化と歯の痛み


歯の中には神経が入るための空間(歯髄腔)があります。

この歯髄腔の内部の気圧も外の気圧と同じように保たれます。

そかし、外の気圧が短時間で急に下がると、調整が間に合わず、歯髄腔の内部と外部で気圧の差が生まれてしまいます。

そのため、歯髄腔内の血管など組織が膨張しようとし、歯に圧がかかり痛みが生じてしまいます。

このような歯の痛みを「気圧性歯痛」と呼びます。

 


歯の痛みが出る人の特徴


全ての人に歯の痛みが出るわけではありません。

痛みの出る人には共通する特徴があります。

  • ・むし歯がある

虫歯によって歯の表面に穴があいていると、日頃は痛みが無くても気圧が低くなることで痛みが出てしまう場合があります。

  • ・歯ぐきや歯の根っこの先に膿がたまっている

歯周病が進行し歯茎に膿が溜まったり、根の先に膿の袋(根尖性歯周炎)が出来ていると、膿の部分が膨張し痛みが生じることもあります。

気圧の変化以外にも、免疫力の低下で歯周病や根尖性歯周炎が悪化することもあります。

  • ・根の治療中の歯がある

神経の治療(抜髄)中の歯は気圧の低下により根っこの内部が膨張、まだ残っている神経を圧迫して痛みが出ることがあります。

このように歯にもともと何かしらの痛みの原因となるものがある方に見られます。

 


痛みが出たとき


痛みが出てしまった時は、痛み止めを飲んで問題ありません。

そして、気圧の変化で痛みがあるときは虫歯や歯周病が進行しているサインの可能性があります。

気圧の変化によって痛みを感じたときは普段は痛みがなかったとしてもなるべく早く受診することをお勧めします。

 


航空性歯痛


飛行機に乗っている時の歯の痛みを「航空性歯痛」と呼びます。

「気圧性歯痛」と同じで、高度の上昇による急激な気圧の低下によって痛みが引き起こされます。

時間がたち、歯髄腔の圧と外気の気圧の差が無くなると痛みが取れますが、飛行機から降りた後も痛みが続くこともあります。

痛みが長引く時は歯科を受診してください。

 


まとめ


気圧の変化をご自身でコントロールすることは出来ません。

気圧性歯痛、航空性歯痛を予防するためにはお口の中の環境を整える事が重要です。

普段から定期健診に通い、虫歯や歯周病が悪化しないよう心がけましょう。

しかし予防を心がけていても痛みが出てしまうことはあります。

機内に痛み止めを準備している航空会社もあります。

痛みが出たときは相談してみてください。