妊娠中のお口の環境の変化はとても大きく、つわりで頻繁に吐いてしまったり、しっかり歯磨きができなかったりと、歯への負担は大きくなってしまいます。
そのため、妊娠中に歯科治療が必要になることもあります。
しかし、妊娠の時期により歯科治療に適した時期、適さない時期があるため、注意が必要です。
本日は妊娠中の歯科治療・受診についてお話ししたいと思います。
目次
妊娠初期(妊娠4~15週ごろ)
この時期の歯科治療は極力避けましょう。
この時期は、赤ちゃんがお腹の中で形作られている最中です。
体調の変化や、つわりがきつい時期でもあり、チェアに横たわったり口を開け続けるのも大変です。
ひどい痛み等、症状がない場合は、歯科治療は避けましょう。
また、どうしてもつらい症状があり治療を行う時も、応急処置にとどめたほうが良い時期になります。
妊娠中期(妊娠16~27週ごろ)
いわゆる安定期という時期になります。
歯科治療を受けるならこの時期になります。
お腹の赤ちゃんの成長に伴い、つわりがおさまる方が多く、体調が比較的安定する時期になります。
歯科検診や治療を受けるならこの時期をお勧めします。
もし治療を受けるのに不安がある場合、お口の状態を維持できそうであれば、応急処置のみ行い、その後の治療は産後に行うことも可能なこともあります。
歯科医師に不安なことや、気になること、その後起こりうること等、相談してみましょう。
妊娠後期(妊娠28週ごろ~)
緊急性がなければ歯科治療は避けたほうが良い時期になります。
お腹の赤ちゃんは安定していますが、妊婦さんのお腹が大きくなり、動くのも大変な時期になります。
また、チェアに仰向けになると大きくなった至急の重みで背中側の動脈が圧迫され低血圧になり気分が悪くなってしまうこともあります。
ただ、どうしてもつらいときは応急処置で対応することも可能です。
また、妊娠中期からの治療が長引き妊娠後期に入ってしまうこともあります。
妊娠後期に入るタイミングで妊娠後期に差しかたったことを歯科医師に伝えると良いと思います。
レントゲン・麻酔・薬の影響
妊娠中、レントゲン撮影や、歯科治療のための局所麻酔、痛み止めや抗生剤などのお薬について不安に感じる方はとても多いです。
〇レントゲン撮影
妊娠中に限らず、レントゲン撮影時の放射線量は、自然界から1年間に受ける放射線量のおよそ40~100分の一程度と、とても少ない上です。
また、必ず防護用エプロンを着用するため、大切な腹部は守られます。
そのため、基本的には妊娠中の撮影も問題ありません。
しかし、妊娠初期の赤ちゃんは様々な影響を受けやすい時期になるため、緊急時以外ではレントゲン撮影は控えたほうが良いでしょう。
〇歯科の局所麻酔
妊娠中に歯科の局所麻酔を受けても、胎児への影響はほぼありません。
歯科で使用する局所麻酔薬の量は少量な上、注射をした部分で分解されます。
また、麻酔薬に含まれているアドレナリンは、血管収縮作用があります。
歯科で使用するアドレナリンの量では胎盤の血流量に影響を与えることはありません。
妊娠中期であれば、通常の歯科治療と同様に局所麻酔を使用することができます。
しかし、妊娠初期は器官形成期のため、局所麻酔は原則的には控えたほうがよいでしょう。
〇お薬
細菌感染が原因による痛みのときに処方する抗生剤や、痛み止めのお薬も、不安の1つだと思います。
抗生剤の中には胎児に影響を及ぼすため、妊婦さんに使ってはいけないもの(テトラサイクリン系・ニューキノロン系)もあります。
抗生剤を処方する際は、安全と考えられる抗菌薬(ペニシリン系,セフェム系,マクロライド系,クリンダマイシン薬)の必要性と安全性を考慮し、最小限の量を投与します。
痛み止めも使用できない種類(ナイキサン)があります。
カロナールやピリナジンは腎臓への負担が少ないので、妊娠中も使えるお薬です。
その分、効果は弱いです。
これで効き目がないとき、妊娠初期であれば効果の強いお薬(ロキソニン)に変更することが可能ですが、妊娠後期はリスクが高くなるので使用は控えたほうが良いでしょう。
まとめ
大切な赤ちゃんをお腹の中で育てているため、食べ物や飲み物など、色々なことが気になると思います。
歯科治療などで使用するレントゲン撮影やお薬も当然気になることだと思います。
しかし、治療を行う時期や、使用するお薬に気を付けることで、歯科治療は安全に行えます。
不安に思うこと、分からないこと等お気軽にご相談ください。