前回はフッ素についておつたえしました。
今回も引き続きフッ素についてお話したいと思います。
目次
1.フッ素についておさらい
歯の表面で行われる脱灰と再石灰化。
フッ素はその再石灰化を促進する効果があります。
また、再石灰化の際にカルシウムと共に歯に取り込まれることでより強い歯を作ることができます。
2.海外でのフッ素使用状況
海外ではおよそ70年前から、フッ素の利用は着々と拡大し、虫歯の抑制に成功しています。虫歯予防におけるフッ素の適正な使用は世界では一般的に行われています。日本では現在行われていない「水道水フロリデーション」という方法が世界では広く行われています
・水道水フロリデーション
フッ素は自然界にも存在するミネラルの一つです。濃度は様々ですが、地球上の水の中には必ずフッ素が含まれています。
フッ素の濃度が1ppmくらいの水で暮らす地域の住民の虫歯が少ないという事が分かりました。虫歯予防に適した濃度の天然水、あるいは、適正な濃度になるよう調整した水を水道水で利用すること。
これを「水道水フロリデーション」とよびます。
1945年にアメリカのある地域で初めて実施されて以降、現在ではアメリカ、オーストラリア、カナダ、韓国、香港等54カ国以上で行われています。
WHO(世界保健機構)やFDI(国際歯科連盟)など150以上の専門機関が推奨しています。
*日本では1952年に京都市山科地区で実施されました。実施から11年後、虫歯の抑制に効果を上げていましたが、地域の浄水場の拡張工事のため1964年に中止となりました。その後、一部地域(米軍基地)を除いて日本で行われたことはありません。
3.フッ素の安全性
フッ素の安全性についてインターネット上で多く流れています。
脳への危険性や全身への危険性について目にすることがあると思います。
しかし、アメリカにおいて水道水フロリデーションの歴史のなかで、これまでにだされた数多くの水道水フロリデーションに対する反対意見(癌の発生率や脳への影響について)が、一般に認められた科学によって実証された試しはこれまで一度もない、と言われています。
4.歯のフッ素症
前述したようにフッ素の安全性は繰り返される研究により確かなものになっています。
しかし、気を付けてなくてはいけないこともあります。
歯のフッ素症です。
・歯のフッ素症
歯のフッ素症とは、フッ素の過剰摂取による慢性中毒の症状の一つです。
エナメル質に左右両側に対称にみられる、不透明な縞模様・境界不明瞭の白斑・白濁などの審美的変化を起こす歯の形成障害です。
ちゅとうどになると歯全体にわたってチョークの様に白濁がみられます。
重度になると白濁に加え、歯面に小さい凸凹ができます。その凹凸のある歯面に外来性の色素の沈着が起こり褐色や黒色になります。
フッ素症の原因はエナメル質形成期における慢性的なフッ素の過剰接種になります。
石灰化時期にある出生から8歳までの小児に対して「0.1mg/kg体重/日」以上のフッ素を毎日摂取することで発症すると言われています。
上顎中切歯が歯のフッ素症にかかりやすい臨界期は1歳から3歳の間です。この時期にフッ化物の摂取が過量にならないように注意が必要です。
幼児(3~5歳児)がフッ素配合歯磨剤を使用し、ひとりで磨いた場合の口腔内フッ素残留量は、0.06mgであり、1日に3回使用したとしても0.18mgで有害な影響はありません。
しかし、フッ化物の全身応用が行われている地域で、フッ素配合歯磨剤を食べたり、毎回誤って飲み込んだりする場合には、過量のフッ素摂取になる場合があります。
全身応用が普及している国では、幼児に対して、フッ素配合歯磨剤の使用量・歯磨き後のすすぎ方・口腔内残留量などに細心の注意が払われています。
全身応用が普及している国があるため、WHOでは6歳未満の子供へのフッ素洗口を禁止しています。
日本では全身応用が実施されていないので過度な心配は不要ですが、吐き出しのできない1歳から3歳未満児には、ジェル状(フッ素濃度500ppm))のものの使用をお薦めします。
5.まとめ
歯の形成期エナメル質が完全に形成された後で過量のフッ化物を摂取しても歯のフッ素症は発生しません。
9歳になるとフッ素の許容量は1日10㎎以内です。
歯磨き粉2㎝(約1g)のフッ素量は1㎎ですが、歯磨き後、ほとんど吐き出してしまうため悪影響はありません。
全身応用が実施されていない日本では通常の使用法であればフッ素症になる心配はまずありません。
虫歯の予防に安心してご利用ください。