以前、虫歯と食生活の関係についてお伝えした時、プラークと、バイオフィルムについて少しお話しました。
今回はバイオフィルムについてお伝えしたいと思います。
目次
1.バイオフィルムとは
例えば、お風呂場の排水溝や、キッチンの三角コーナーのヌルヌル。
これがバイオフィルムです。
バイオフィルムと呼ばれるこの生物膜は、細菌が自ら生産した物質(菌体外多糖)に覆われ、細菌が繁殖するのに最適な湿度を保っています。
つまり細菌にとって住み心地の良い場所といえます。
そのため、バイオフィルムの中にはさまざまな種類の細菌が集まり、同居している状態となります。一円玉程度の大きさのバイオフィルム中に、一億個を超える菌が住み着いている場合もあります。
そして、口の中にもバイオフィルムは作られてしまいます。
プラークが口の中のバイオフィルムです。
先ほどもお話した通りバイオフィルムは、細菌が自ら生産した物質(菌体外多糖)に覆われています。
そのため、薬剤や、免疫系への抵抗性が上がってしまいます。
2.バイオフィルムができるまで
- ①歯磨き後1~2分
歯の表面をだ液がコーティングします。 これをペリクルといいます。 ペリクルは皆さん必ず作られるもので、口腔細菌が歯質に吸着するための足がかり、歯垢形成の初段階、齲蝕発生の始まりとも言えます。 しかしその一方で、耐酸性の保護膜としての働きもあります。
- ②~8時間
ペリクルの上に、だ液成分を好む善玉菌群がくっついて定着し、健全な歯垢が形成されます。 この時点でのプラークはまだ粘着性やネバネバした感じはありません。 色は白色の健全なプラークと言われています。
- ③~48時間
善玉菌により、すき間が見えなくなるほど歯面が覆われると、悪玉菌がその上に積み重なっていきます。 この悪玉菌は主に歯周病菌で、ネバネバした物質を作り出し歯の表面を覆います。 舌で触るとザラザラとした感じがします。
- ④3日以降
悪玉菌がネバネバし物質を合成し、これらの菌群全体が覆われた状態になります。 これがバイオフィルムです。 このバイオフィルムの中の細菌から毒性物質が作り出され、歯肉や血管などに激しい炎症を起こします。 最も体に悪い影響のある状態です。
- ⑤3日~1か月
④の状態がさらに放置され、だ液中のカルシウムが沈着し固まって、歯石となります。
3.バイオフィルムの除去
排水溝などに出来てしまったバイオフィルムは簡単には落とせません。
スポンジやブラシでこするだけでなく薬品を使うこともあると思います。
歯に出来てしまったバイオフィルムも同じで、セルフケアの歯磨きでは取れません。
歯医者で行うクリーニングでも、保険治療のクリーニングでは落とす事ができません。
PMTCという特別なクリーニングを行う必要があります。
PMTCとは、「Professional Mechanical Tooth Cleaning」と言います。
専門家による専用の機器とフッ素入り研磨剤を用いたお掃除のことを指します。
4.保険のクリーニングとPMTC
保険で行うクリーニングは、歯周病の治療のため、出来てしまった歯石を除去・除去後の歯面を滑沢にすることを目的としています。
一方PMTCは虫歯・歯周病の予防のため、歯石ができる前の段階のバイオフィルムの除去・歯面の強化を目的としています。
同じように歯科で行うお掃除ですが、目的が異なるため、使用する道具や研磨剤も違ってきます。
5.当院でのPMTC
①プラーク・バイオフィルムの染め出し
②お薬を歯に塗りプラーク・バイオフィルムの中の細菌を殺菌
③機械を使用してプラーク・バイオフィルムを除去
④フッ素を塗布し歯面の強化
6.まとめ
セルフケアでは取り除くことが出来ないバイオフィルム。
出来ないように日々のブラッシングを行っていてもどうしても、磨きにくい場所、磨けない場所にバイオフィルムは出来てしまいます。
バイオフィルムは放っておいてしまうと虫歯や歯周病の原因となってしまいます。
そのバイオフィルムを取り除く事ができるPMTCは虫歯・歯周病の予防のためのクリーニングです。
クリーニング後、ツルツルの歯に驚かれると思います。
是非一度PMTCを行ってみてください。