前回、親知らずについてお伝えしました。
状況によって抜歯が必要になります。
「親知らずの抜歯=腫れる、痛い」
と聞くことが多いと思います。
しかし、実際は全ての親知らずの抜歯が腫れ、痛みがあるわけではないのです。
本日は親知らずの抜歯についてお話ししたいと思います。
目次
目次
1.抜歯後の痛みの原因
①抜くときに周りの骨に負担がかかった時
例えば骨折した時、骨折した部位はズキズキと痛みます。
これは骨折した部位の血流が増え、免疫系の細胞が活発に動くため起こる痛みです。
抜歯後も同様に免疫系が働くため痛みが起こります。
②炎症症状が強い歯を抜いた時
根の先に膿を作っているような歯の場合や、歯周病が進行し歯肉の炎症が強いような歯を抜くと強い痛みが出ることが多く、また痛みも長引くことがあります。
③大きくて根がしっかりした歯を抜いた時
根が大きく太くなることがあります。また、歯によってはが2つ、3つに分かれるのですが、分かれた根の間に骨を抱え込んでしまうことがあります。
その様な歯の抜歯では周りの骨への負担が大きくなり①でお話したように痛みが出ます。
④ドライソケットになってしまった時
抜歯後、抜いたところにはかさぶたができます。 このかさぶたが剥がれると骨が露出してしまいます。
骨が露出してしまうことで感染を起こした状態をドライソケットと呼びます。 ドライソケットになってしまうと強い痛みが長引きます。
この痛みの原因は親知らずに限らず全ての抜歯に当てはまります。
2.上の親知らずと下の親知らずの違い
まず骨について少しお話します。
骨は海綿骨という柔らかい骨を皮質骨という硬い骨が覆っています。
そして、皮質骨には骨孔と呼ばれる小さな穴が無数に開いています。
下顎の骨、特に奥歯は、皮質骨が厚く硬い骨になります。
また、下の奥歯の骨孔は穴が狭く、また数も少ないです。
①上の歯の場合
上顎の骨は海綿骨が多く柔らかい骨になります。
そのため、抜歯前に行う麻酔も骨に浸透しやすくなり、麻酔が効きやすいため、術中の痛みも少なくなります。 また、骨自体が柔らかいため、抜歯中の骨への負担が少なくなり、術後の痛みも出にくいです。
②下の歯の場合
下顎の骨は硬く、また骨孔も少ないため、麻酔が柔らかい海綿骨まで浸透しにくくなり、効きにくくなります。
また、骨が固いことで抜歯中の骨への負担が大きくなってしまいます。
上下の違いで、同じ親知らずの抜歯の痛みの出やすさは変わります。
骨が柔らかい上の親知らずは下に比べると術中の負担が少なくなります。
そのため、上の親知らずの抜歯は、術後の痛み、腫れは出にくくなります。
3.横を向いている時と、まっすぐ生えている時の違い
①横を向いている時
前回、下の親知らずの多くは横を向いて生えてくることが多いことをお話しました。
横を向いていて、歯に歯肉がかぶっていて歯が十分に見えない時、歯肉を切り歯が見えるようにします。
その際、骨に大きく覆われていて、歯が十分に見えていないときがあります。
その様なときは歯が見えるように骨を削る必要があります。
抜くためのスペースを確保するために骨を削ることもあります。
歯を抜くには抜くためのスペースが必要ですが、横を向いて生えているとき、抜くためのスペースが不足することがあります。
スペースが足りないとき、まずは歯の頭の部分を切断し、取り除くことでスペースを作ります。
それでも足りないときは歯をさらに細かくします。
抜歯後、切開したときは糸で縫います。
切開していない場合でも、歯肉の状態によっては縫うことがあります。
歯が見えるようにするためや、抜くためのスペースを作るために骨を削る量が増えると痛みも強く出ることが多いです。
②まっすぐ生えている時(まっすぐ生えてきそうな時)
まっすぐ生えている時とは歯は骨から出てきているということになります。
そのため、骨への負担も比較的少なくなります。
しかし、分かれている根が曲がっていて、根の間に骨を抱え込んでいるような時や、根の先が固い皮質骨に入り込んでしまうことがあります。
その様な時は抜歯も少し難しくなり、また、周りの骨への負担も大きくなります。
骨への負担が大きくなると、痛みが強く出やすくなります。
4.まとめ
親知らずの抜歯といっても腫れや痛みが出るかはまちまちです。
もちろん、一般的には痛みの出にくいまっすぐ生えてきている上の親知らずの抜歯でも痛みが出る方もいらっしゃいます。
親知らずの抜歯について分からない事、不安な事があるときはどんな些細な事でも構いません。
お気軽にご相談ください。
また、痛みが強い時は麻酔が効きにくくなります。
そのため、すぐに抜くことはできません。
痛みが出る前に受診しましょう。