前回は乳歯の役割や見た目についてお話ししました。
今回は乳歯の生える時期、生え変わりについてお話ししたいと思います。
目次
1.乳歯が生え始める時期
乳歯は生後6か月ごろから下の前歯から生え始めることが多いです。
その後上の図のような時期に生えてくることが多いといわれていました。
2.歯の交換期
6歳ごろになると下の第一大臼歯という大きな歯が出てきます。
永久歯への交換期の始まりになります。
その後下の前歯、上の前歯、と順番に交換していきます。
特に第三大臼歯は歯が無い場合や、生えてこないこともある歯です。
3.乳歯の生え方の変化
先ほどの歯が生え始める時期、実は、30年前の調査結果になります。
これは、歯は体の中でも一番硬い臓器で、身長や骨格や体型のように目立った変化は見られないと考えられていたため、調査は行われませんでした。
2018年に全国29大学の小児科の協力のもと生後3か月の赤ちゃんから18歳の学生までの約3万9千人を対象に乳歯、永久歯の生える時期を調べました。
その調査の結果判明したことがいくつかあります。
- ①前歯の生える時期が早まっている。
- ②奥歯の生え始めは遅くなっている。
- ③乳歯の生える時期の個人差が大きくなっている。
①前歯の生える時期が早まっている。
男の子で1.8ヶ月、女の子で1.5ヶ月と、およそ2ヶ月ほど生え始めが早まりました。
この時期は授乳期になります。
前歯が生えてくると授乳中に噛まれ、困っているお母さんも多いと思います。
前歯が生える時期が早まるのは、お母さんにとって、嬉しい成長であり辛いことでもあるかと思います。
一説によると赤ちゃんは痛がるお母さんの反応を見て楽しんでいるそうです。
咬まれても、痛がったり、怒ったりせず、「無視」。
すると噛むことも減ってくる、と言われています。
②奥歯の生え始めは遅くなっている。
30年前の調査では2歳頃だった第二乳臼歯ですが、2歳半頃と遅くなっていることが分かりました。
また、30年前より時間をかけて乳歯列を完成させているようです。
③乳歯の生える時期の個人差が大きくなっている。
今回の調査の前までは歯が生える時期を平均値で示していました。
しかし、調査結果より、標準萌出期間(平均時期±標準偏差)で表し、以前の表記より幅を持たせる表記になりました。
(身長、体重の表記と同じ表記方法です)
4.永久歯の生え方の変化
乳歯同様、永久歯にも変化がありました。
- ①一番初めに生える永久歯が変わった。
- ②永久歯の生え始めが早まっている。
- ③奥歯の生え始めは遅くなっている。
①一番初めに生える永久歯が変わった。
一番初めに生えてくる永久歯は、長いこと下の第一大臼歯いわゆる6歳臼歯と呼ばれる歯と言われていました。
今回の調査により、下の前歯(中切歯)が初めに生えた子が70%もいたそうです。
第一大臼歯が食事の時に重要な歯(咀嚼効率)となることは以前お話ししました。
しかし、この歯は乳歯列の奥から生えてくるため、生えてきたことに気づきにくく、虫歯になりやすい歯になります。
前歯が先に抜け替わると、生え変わりが始まったこと気付け、「奥歯もはえてくる」と意識することができます。
生える順番が変わったことで意識を向かせ、虫歯予防へと役立てていただきたいです。
②永久歯の生え始めが早まっている。
乳歯同様、永久歯も前歯の生え変わりの時期が早まっていることがわかりました。
早いと4歳ごろに乳歯が抜ける子も見かけます。
小学校に上がるころには前歯の生え変わりが終了していることもあります。
③奥歯の生え始めが遅くなっている。
第二大臼歯(前から7番目の歯)はとくに遅くなってきています。
遅いと高校生でも、生えたての永久歯ということもあります。
生えたての永久歯は虫歯に弱い歯になります。
中高生にもなると仕上げ磨きは行わないと思います。
また、お友達とお菓子を食べ得る機会も増えたり、運動部にはいると、スポーツドリンクを飲む機会が増えると思います。
そのため、虫歯のリスクはとても高いといえます。
毎日丁寧なブラッシング、歯科での定期的なメンテナンスを行い、虫歯の予防に心がけましょう。
5.まとめ
子供が小さい時、ちゃんと発育しているか、正常に発育しているか不安で平均値が気になるかと思います。
先ほどお話した通り、生え始め、生え変わりの時期には個人差があります。
この個人差があることを考慮し、「標準萌出期間」という表記法に変更されました。
「期間」つまり、「幅=個人差」があって当然です。
周りのお子さんより遅くても「のんびりな子なんだな」と様子を見守ってみてください。
しかし、標準萌出期間を過ぎても生えてこない場合は歯科にご相談ください。