「麻酔をしたのに痛みがある」という経験がある方は多いかと思います。
本日は麻酔が効きにくいときについてお話ししたいと思います
麻酔が効きにくいとき
麻酔が効きにくくなる原因はいくつかあります。
- ・強い痛み(炎症)がある
- ・下顎の治療
- ・緊張している
- ・体調不良や、前日の深酒
- ・疼痛閾値の低下
「いつもは効くのに今日は効かない」とい感じたことがあるかもしれません。
その日の体調や、治療の場所などにより麻酔の効きやすさに変化があるからです。
強い痛み(炎症)がある
炎症状態にある時、その部位は酸性に傾きます。
人の血液は健康な時はpH7.4程の弱アルカリ性です。
麻酔薬はこの健康なときのpHで効果が出るように作られています。
つまり、炎症があり酸性に傾いている部位は、麻酔が効きにくくなります。
また、炎症の部位は血流がおおくなります。
そのため、麻酔薬がその場に留まりにくくなり、麻酔が効きにくくなっているのではないか、とも言われています。
下顎の治療
骨は海綿骨という柔らかい骨を皮質骨という硬い骨が覆っています。
そして、皮質骨には骨孔と呼ばれる小さな穴が無数に開いています。
下顎の骨、特に奥歯は、皮質骨が厚く硬い骨になります。
また、下の奥歯の骨孔は穴が狭く、また数も少ないです。
つまり、下顎の骨は硬く、また骨孔も少ないため、麻酔が柔らかい海綿骨まで浸透しにくくなり、効きにくくなります。
緊張している
緊張し、体がこわばっていると針が通りにくくなり、痛みを感じやすくなります。
また、痛みを意識しすぎると、少しの刺激でも痛みを感じやすくなってしまいます。
麻酔をするとき、お鼻でゆっくり深呼吸をして、緊張を和らげてみましょう。
体調不良や寝不足、前日の深酒
体調不良や深酒をしていると麻酔が効きにくくなることがあります。
また、麻酔直後に心拍が強くなったり、早くなったり、気分が悪くなることもあります。
麻酔後、具合が悪くなってしまった時、すぐ回復し、麻酔も十分にきいていれば問題ありません。
しかし、長引くようなときは、無理をせず、体調を整えてから再度治療を行うと安心かと思います。
疼痛閾値の低下
疼痛閾値とは痛みの感じやすさです。
疼痛閾値が低ければ痛みを感じやすく、逆に閾値が高ければ痛みを感じにくくなります。
疼痛閾値には当然個人差があり、決まった基準はありません。
また、この疼痛閾値は日々変化します。
これは脳内で痛みを感じるメカニズムが変化するため起こります。
治療を開始する前に麻酔を行ったが途中で痛みが出たため麻酔を追加。
その後また途中で痛みが出たため麻酔を追加。
しかしまた痛みが…
治療中の痛み→麻酔の追加→痛み→麻酔の追加→…
これを繰り返していくと麻酔が効きにくくなります。
これは繰り返す痛みにより痛みに過敏になり、疼痛閾値が下がることで起こります。
また、この疼痛閾値は恐怖や不安感、疲労などで下がると言われています。
すでにお話しした緊張や寝不足はこの疼痛閾値を下げていると考えられます。
まとめ
「痛くて腫れているのに薬を出して終わりだった。」と不満に感じたことがある方もいらっしゃるかもしれません。
しかし強い腫れ痛みの時は強い炎症状態にあり、麻酔が効きにくい状態です。
そのため、「安心安全に治療を行えるようになる」ために、お薬をお渡ししています。
また、麻酔が苦手で不安や緊張をしている方は、緊張を和らげるために深呼吸をしてみてください。
麻酔が効きやすくなるかもしれません。