持病と薬と歯科治療「糖尿病」


持病とお薬と歯科治療についても3回目になりました。

3回目の本日は、糖尿病についてお話したいと思います。

(1回目:「高血圧について」 2回目:「血栓症について」)

 

糖尿病とは


糖尿病とは「血液中の糖の量が増えすぎる」病気です。

通常、血液中の糖(ブドウ糖)は膵臓から分泌される「インスリン」というホルモンで分解されます。

糖尿病は糖の分解がうまくいかないために引き起こされます。

  • ・1型糖尿病

膵臓でインスリンを作っているβ細胞が何らかの原因で壊されている。

破壊されることで、インスリンを出す力が弱まったり、インスリンが出なくなったりする

  • ・2型糖尿病

すい臓の働きが弱くなりインスリンの分泌量が低下するため(インスリン分泌低下)

肝臓や筋肉などの組織がインスリンの働きに対して鈍感になり、インスリンがある程度分泌されているのに効きにくくなるため(インスリン抵抗性)

 


糖尿病の合併症


高血糖が続いていると、全身の細い血管や神経の障害が出てきます。

〇細小血管障害

体の細い血管が障害されて血流が悪くなります。

とくに細い血管が集中している場所に合併症が起こります。

  • ・糖尿病網膜症
  • ・糖尿病腎症
  • ・糖尿病神経障害

〇大血管障害

高血糖の状態が続くと、太い血管は動脈硬化が加速します。

動脈硬化とは血管内にプラーク(隆起)が出来る状態で、プラークができると血流が悪くなります。

動脈硬化が進むと血流が途絶えたり、剥がれたプラークが血管につまり重要な臓器に栄養が行かなくなり、組織が腐ってしまいます。

  • ・脳梗塞
  • ・心筋梗塞
  • ・末梢動脈疾患(潰瘍や足壊疽など)

 

〇その他合併症

  • ・歯周病

細菌感染を起こしやすいため、歯と歯ぐきの間の感染「歯周病」も悪化しやすくなります。

また、歯周病があると糖尿病も悪化するといわれています。

  • ・様々な感染症

肺結核、尿路感染症、皮膚感染症などの感染症にかかりやすくなります。

 


糖尿病の薬


糖尿病の薬にはインスリン注射と飲み薬があります。

1型糖尿病の方はインスリンが作られないため、体外からインスリンを補給する必要があります。

そのため、常にインスリン注射を行う必要があります。

2型糖尿病の場合、おおもとの原因は生活習慣にあります。

まずは食事制限や運動が治療の第一選択となります。

それでも改善されない場合は血糖降下薬の服用やインスリンの注射を行います。

 


歯科治療と糖尿病


糖尿病は血流が悪くなり、栄養や免疫細胞が届きにくくなるため、感染への抵抗力が弱まり傷が治りにくくなります。

細菌感染を起こしやすく、炎症もひどくなりがちです。

歯の根に出来た病変(根尖病巣)やインプラントの歯周病といわれるインプラント周囲炎の炎症が広がることがあります。

炎症があごの骨に広がったり(顎骨炎)、首の周りに炎症が広がる(蜂窩織炎)こともあります。

抜歯後や、インプラントの手術後も傷が開きやすく、感染を起こしやすいため注意が必要です。

また、血糖値の乱高下も注意が必要です。

血糖値は空腹時で100が正常ですが、糖尿病の方は200近くに上がる一方で歯科治療中、時間とともに50以下に落ち込むこともあります。

血糖値が低下すると思考力が低下したり、さらに酷くなると意識を失う事となります。

これを「低血糖性昏睡」と呼ぶのですが、非常に危険な状態で、命を落とすこともあります。

 


安全に歯科治療を行うために


  • ・病状やかかりつけの病院を正確に伝えてください

糖尿病の方の外科治療は糖尿病の状態を見ながら行います。

糖尿病の状態が良くない場合は先に血糖のコントロールを行う必要があります。

そのため、主治医と連絡を取るため、病状やかかりつけの病院についてお伝えください。

 

  • ・来院前はお食事を抜かないでください

外科処置中に気分が悪くならないように、と食事をしないで来院される方もいます。

糖尿病の方の場合、血糖値の異常低下が起きるリスクとなります。

お食事はしっかりとるようお願いします。

 


まとめ


糖尿病は自覚症状のない事も多く、予備軍の方も少なくありません。

「喉が渇く」「夜中に何度もトイレに行く」というのは糖尿病の要注意サインです。

他にも疲れやすかったり、体重の急激な減少が見られるときは医師に相談してみてください。