持病と薬と歯科治療「高血圧」


以前、骨粗しょう症や癌の薬によって引き起こされる骨壊死「薬剤関連顎骨壊死(MRONJ)」についてお話しました。 

歯科治療を行う際、注意しなくてはいけない病気、お薬は他にもあります。 

  • ・高血圧症 
  • ・血栓症 
  • ・糖尿病 
  • ステロイド製剤を長期服用されている方

これらの病気やそのお薬は抜歯やインプラント手術などの外科的な治療を受ける際、注意が必要になります。 

「持病について話したくない」「歯科治療で関係ないだろう」と思い、ご自身の持病、お薬についてお話しいただけない方もいらっしゃいます。 

しかし、歯科医が知らないまま治療を行ってしまうと危険です。 

  • ・命の危険 
  • ・痛み腫れが続く 
  • ・治りが悪くなる 

など患者さん自身が辛い、苦しい思いをされることがあります。 

本日はこの中から「高血圧」についてお話したいと思います。 

 


高血圧とは


私たちの体は心臓から全身へと血液が送り出されています。 

このとき血管の壁(血管壁)にかかる力(圧力)を「血圧」と呼びます。 

高血圧とはこの血管にかかる力が大きい状態になります。 

血管にかかる圧力が大きい状態は、脳や心臓への負担になります。 

高血圧は、脳血管障害(脳卒中)、心筋梗塞、心不全の最大のリスクと言われています。 

高血圧の患者は約4300万人いると言われ、高血圧を起因とする脳血管障害や心疾患により年10万人が亡くなっていると推定されています。 

 


高血圧の薬


高血圧の方が飲むお薬は「降圧薬」と呼ばれ、「血管にかかる圧力を下げる」お薬になります。 

降圧剤には様々な種類があり、作用の仕方もそれぞれ違います。 

例えば、「血圧を上げる神経の働きを抑えて、血管を広げ、血圧を下げるもの」や、「血管の収縮を抑えて、血管を広げ、血圧を下げるもの」等があります。 

 


歯科治療と高血圧


痛みやストレスを感じると血圧をコントロールするホルモンの様なもの(カテコールアミン)がたくさん出て、血圧が上がります。 

「普段は問題ないのに、病院で、医師を前にすると血圧が上がってしまう」という経験がある方もいらっしゃるかと思います。 

これは、白衣を着た医師に緊張してしまい一時的に血圧が上がってしまう現象で、「白衣性高血圧」といいます。 

これは普段血圧が正常な方にもおこりえます。 

歯科医院で、チェアーに横たわり、麻酔をする、抜歯をするというとき、緊張してしまうかと思います。 

ストレスを感じてしまうことで普段より血圧が上がってしまいます。 

高血圧の方は治療時のストレスにより、さらに血圧が上がります。 

血圧が上がりパンパンになった血管が破れ脳出血を起こしてしまうこともあります。 

 


安全に歯科治療を行うために


血圧が高めの方には、体調を見ながら治療を進めます。 

麻酔をした時や、外科処置をしている時など、体調に応じて血圧を測りながら進めていくこともあります。 

緊張により血圧が上がっているときは、落ち着くまで時間を置くこともあります。 

しかし、時間をおいても血圧が落ち着かない時は治療を延期することもあります。 

 


まとめ


治療時の緊張で血圧が上がると、心臓もドキドキと拍動を感じられるくらい働いてしまいます。 

しかし、心臓よりも危険なのは脳の血管への影響です。 

押し広げられた血管が、血管壁にかかる圧に耐えられなくなり、血管が破れる可能性があるからです。 

高血圧が原因で起こった脳出血は高血圧脳症と呼ばれます。 

治療中に起こってしまうと命にかかわります。 

このような事を予防するためにも、高血圧の方は必ずお伝えください。 

また、受診前は必ずいつも通りお薬を服用してください。