前回、歯ぎしり・TCHによる歯を傷める過剰な力についてお話しました。
また、その力によって引き起こされるトラブルについてもお話しました。(詳しくはこちら)
本日は「過剰な力を減らすために出来ること」についてお話したいと思います。
前回のまとめ
引き起こされるトラブル
・被せ物が壊れやすい
- 被せ物が欠ける
- インプラントの被せ物が欠ける
- 被せ物が外れる
・歯の根が割れる
・骨が減る
TCH(歯の接触癖)に気が付くには
パソコン作業中や運転、書き物等を行っている際、上下の歯は触れていませんか?
まず自分にTCHがあるかどうか、意識することが必要です。
10分後にタイマーをセットし、普段通りに過ごします。
タイマーがなった時に歯が接触していないか意識してください。
色々な場面で行うことで、どのようなときにTCHをするのか、自分の癖がわかってきます。
パソコン横など、目に付きやすいところに目印になる付箋を貼り、目に入ったときに歯が接触していないか意識してみましょう。
歯ぎしりに気が付くには
歯ぎしりは睡眠中に行っているため、ご自身で気が付くのはなかなか難しいです。
主にご家族からの指摘で分かることが多いです。
また、起床時の歯のうずきやあご、首が起床後2~3時間ほど続くような痛みがあるときは睡眠中に歯ぎしりをやっている可能性が高いです。
歯ぎしりを減らすために
夜中の歯ぎしりや食いしばりは8割以上が睡眠の浅い時に起こります。
つまり、心地よい深い眠りを行うことで歯ぎしり食いしばりが減ると考えられます。
- ・ストレスマネジメント
ストレスは不眠症に関連する血中コルチゾールの分泌を増やし、眠りを浅くしてしまいます。
散歩などの気分転換や適度な運動を取り入れストレスマネジメントを心がけましょう。
- ・深酒は睡眠の妨げに
アルコールは入眠を早めますが、睡眠そのものの質を下げてしまいます。
カフェインの覚醒効果も不眠のリスクになるため気を付けてください。
- ・睡眠時無呼吸や逆流性食道炎の治療を行う
夜中に繰り返し眠りが浅くなるため、歯ぎしりが誘発されていると考えられています。
身体の健康のためにも、治療を受けましょう。
トラブルを減らすための対策
日中のTCHは本人の意識次第で改善は可能です。
しかし、注意が必要なのは、無意識下で行われる歯ぎしりです。
複合的な要因で起きている歯ぎしりから歯を守るには、対策も複合的に行う必要があります。
- ・ナイトガード(夜間装着するマウスピース)の装着
マウスピースを装着すると約9割の方は歯ぎしりがいったん止みます。
3週間ほど使用し、装着に慣れてくると、また歯ぎしりは再開してしまいます。
しかし歯ぎしりが再開しても、マウスピースが歯にかかる力を分散させ、また、歯の代わりに削れてくれるため、歯を守れるのです。
マウスピースには柔らかい物と硬い物があります。
硬い物は穴があきにくいため、歯ぎしりや食いしばりの力が強い方は硬い物がお勧めです。
- ・耐久性の高い材料や治療法を選ぶ
例えば白い被せ物を入れたいとき、セラミックの中でも強度のある材料がジルコニアです。
透過度が高く審美的に優れているオールセラミックですが、強い歯ぎしりや食いしばりがある方は欠けてしまう恐れがあります。
ジルコニアは金属と比べられるほどの強度があります。
金属のよりも劣化しにくく、オールセラミックよりかけにくく、高い耐久性があると言えます。
まとめ
無意識に加えられる過剰な力は、歯の経年劣化を加速させます。
さらにそのダメージは蓄積され、「歯を失う要因」となってしまいます。
特に歯を失い始めると、残った歯に集中的に力がかかることも相まって様々なトラブルが連鎖的に発生することもあります。
過剰な力は、若いうちから注意が必要です。
「口を閉じる=上下の歯を接触させる」と思い込んでいる方もいらっしゃいます。
ご自身で正しい知識を得るきっかけは日常生活ではなかなか見当たらないかと思います。
歯科を受診し、困っていることなどご相談いただければ、と思います。
また、その際かかりつけ歯科だと、経年的な変化にも目を向ける事ができるため、若いうちからかかりつけ歯科を持つことは歯を守るうえで重要です。