前回、「歯周病について」お話しました。
本日は「歯周病と体の関係」について、お話したいと思います。
目次
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1.歯周病とは
日本人の30歳以上の8割がかかっていると言われている病気です。歯茎の近くについた歯の汚れが原因で歯周組織が炎症を起こしている状態をいいます。
最初は歯茎の炎症から始まり、進行していくと口臭がしたり、酷くなると歯を支える骨を溶かして最終的には歯が抜けてしまう病気です。
サイレントディジーズとも呼ばれ、症状があまり無く進行していくため、気づくのが遅れると重症化していることもあります。
世界一患者数が多い病気としてギネスにも記載されています。
2.歯周病になりやすい4つの因子(リスクファクター)
歯周病はまず細菌が引き起こします。ですが細菌以外にも、歯周病になりやすい因子(リスクファクター)があります。
①微生物因子
歯周病菌のことです。歯の汚れのなかには多量の細菌が存在しています。その中には毒素を作るものがいます。その毒素により歯茎を腫らし、また骨を溶かしたりします。
②環境因子
炎症を引き起こしやすい状況や悪化のリスクを高める状況のことです。歯ブラシの習慣や喫煙など生活習慣等も含まれます。
- ・喫煙:喫煙による抵抗力の低下
- ・清掃不良:多量の汚れの付着
- ・歯と歯茎の溝の深さ:歯ブラシで除去することができない深い部分への汚れの付着
- ・ストレス:抵抗力の低下
- ・口呼吸:口の中が乾燥し、炎症を引き起こしやすくなる
- ・歯に合っていない被せ物、詰め物:汚れがたまりやすくなる
- ・歯並び:清掃困難な場所への汚れの付着
- ・歯科の受診回数:歯ブラシでは取れない汚れは歯科で器具を使わないと除去できない
等
③宿主因子
生まれ持った抵抗力の違いや、加齢や病気による免疫力の低下等が悪化のリスクを高めます。
- ・年齢
- ・唾液量
- ・免疫力
- ・糖尿病
- ・骨粗鬆症
等
④かみ合わせ(環境因子に含む場合もあります)
かみ合わせが良くない場合や歯ぎしりや食いしばり等歯に強い負担がかかると歯周病悪化のリスクとなります。
このように歯周病を引き起こしやすくする因子の輪が重複することで、また重なる輪の数が多いと、歯周病発症、重症化のリスクが高くなります。
免疫力など、生まれつき歯周病になりやすい方もいます。歯並びの関係でセルフケアで完全に汚れを落とすのが困難な場合もあります。自分にはどの程度リスクファクターがあるのか知ることも歯周病の予防につながる大事な事です。
3.歯周病と全身の関り
歯周病が全身の健康に関わっていることが分かってきています。
歯周病のある場所には、歯周病原性細菌とその細菌が産生する毒素、炎症のある場所で作られるプロスタグランジンやサイトカインなどの炎症性反応物質があります。歯周病が悪化するに従い、その量も増えてきます。これらが歯肉の毛細血管を通じて全身に搬送されます。
①高血圧
高血圧の方で、歯周病がある方とない方で比べると、歯周病に罹患している方の方が血圧が高くなることがわかりました。
また、歯周病があると高血圧のお薬が効きにくくなることも判明しています。
②糖尿病
歯周病によって作られた炎症性反応物質や歯周病菌の毒素が、筋肉細胞や脂肪細胞に働きかけて糖の代謝を妨げます。また、インスリン(血液中の糖濃度を下げる)の作用を弱めます。そのため、糖尿病が悪化します。
先ほども記載しましたが、糖尿病は、歯周病のリスクファクターの一つになっています。糖尿病が免疫力を低下させ、歯周病を悪化させます。
糖尿病と歯周病は密接にかかわっており、お互いが影響しあっていると言われています。
③心臓疾患
慢性的な歯周病により、歯周病菌が血管に入り込み、心臓へ侵入します。
その細菌が弁や膜に感染を起こすと、心内膜炎を起こします。
心臓の血管にとりついて血栓を形成すると、血管が狭くなったり、血管内皮に傷が入ることにより動脈硬化をおこし、狭心症や心筋梗塞の発症リスクが高まります。
④低出生体重児
歯周病菌炎症性反応物質が血管から子宮筋に作用し子宮の収縮を早めます。そのため、早産に繋がります。また、血液に乗った毒素や炎症性反応物質が胎児の成長を妨げているとも言われています。
妊娠中は女性ホルモンの関係で歯肉炎になりやすいと言われています。また、つわりなどで口腔内の衛生状態が悪くなりやすく、特に注意が必要です。
⑤肺炎
付着しているプラークから菌や炎症性反応物質が唾液に交じり気管に入ることもあります。
気管や気管支で歯周病菌が炎症を引き起こすと気管支炎、肺炎となります。
4.まとめ
これまで、歯周病は歯ぐきから血がでたり、歯がぐらぐらしたりと口の中だけの病気と考えられてきましたが、このように口の中だけでなく、全身の健康に影響を及ぼしています。したがって、歯周病の予防や早期治療は全身の健康のために、とても大切なのです。
また、歯周病の病状を知るうえで、自分にはどのようなリスクファクターがあるのかを把握し、またそのリスクファクターを減らすことが重要です。
症状や特に気になることがない場合でも、まずは一度受診し現状を知るところから始めましょう。