前回に引き続き、抜歯を勧める状態についてお話したいと思います。
抜歯を勧めるケース
- ・大きな虫歯
- ・残根状態の歯
- ・歯根破折を起こした歯
- ・重度歯周病の歯
- ・歯肉や隣の歯に悪影響を与えている歯
「大きな虫歯、残根状態の歯、歯根破折を起こした歯」についてはこちらをご覧ください。
重度歯周病の歯
歯周病は細菌の感染によって引き起こされる疾患です。
歯肉と歯の間の隙間(歯周ポケット)に汚れが溜まるとそこに多くの細菌が停滞し、歯肉の炎症が起こります。
さらに進行することで炎症は骨にまで広がり、歯を支える骨がなくなっていきます。
重度歯周病とは歯を支える骨がほとんどなくなってしまった状態のことです。
歯の周囲の骨がなくなることで、深くなる歯周ポケットは歯ブラシで汚れを落とすことは出来なくなります。
そのため深い歯周ポケットは、細菌の棲み処となる汚れや歯石が溜まりやすくなり、歯周病は進行しやすくなります。
もちろん定期的に歯科でのクリーニングを受けることで歯周病の進行を抑えられる歯は抜歯せずに定期健診で状態を確認していきます。
しかし、歯周治療を受けていても進行を抑える事ができない重度歯周病の歯を残しておくことは多くのリスクが伴います。
- ①歯周病は全身疾患にも影響を与えていることが分かっています。
現在、糖尿病、認知症、早産、動脈硬化、脳梗塞・心筋梗塞、癌など多くの疾患等多くの疾患に関係が判明しています。
細菌の量が多ければ、誤嚥性肺炎のリスクも当然高くなります。
- ②骨が無くなっていく
進行を抑えられない場合、骨はどんどん少なくなっていることが考えられます。
そうすることで、支えをなくした歯は揺れが強くなり、噛む機能も果たせなくなっていきます。
また、骨の炎症の範囲が広くなれば、隣の歯も影響を受ける可能性があります。
また、骨が少なくなってからでは、抜歯後の治療も難易度が上がっていきます。
- ③口臭の原因であることもわかっています。
歯周ポケットの深い重度歯周病の歯を抜くことで口臭が改善することもあります。
お手入れのできない歯周ポケットの深いところに細菌が溜まってしまい、その細菌が臭いの原因となっているからです。
隣の歯に悪影響を与えている歯
正しい位置に正しい向きで生えてこられず、隣の歯に悪影響(虫歯や歯周病)を与えてしまっている歯になります。
例えば、傾いて生えている親知らずや、歯並びが悪く歯同士が大きく重りお掃除が出来ない原因となっている歯です。
- ・傾いて生えている親知らず
親知らずが傾いて生えてきて、隣の歯とぶつかっているとぶつかっている部分は歯ブラシが届かずプラークが溜まりやすい状態になります。
このプラークが親知らずの周りの歯茎の炎症(智歯周囲炎)や、親知らずと手前の歯の虫歯の原因となります。
また、手前の歯の虫歯は親知らずと触れているところから広がります。
「歯茎で隠れている場所の虫歯」や、「歯の根に広がっている虫歯」となる場合もあります。
とくに根に広がっているような虫歯は、手前の歯の寿命も短くなってしまいます。
さらに前回お話したように大きすぎる虫歯は残すことが難しく、手前の歯も抜歯が必要になることがあります。
親知らずの抜歯についてはこちらをご覧ください。
まとめ
「歯を抜く必要がある」ということを受け入れ、決断することは簡単には出来ないことだと思います。
「抜く必要がある」ということをお伝えするのは今後のことを考えて必要な事、抜かなくてはいけない理由があるからです。
抜く・抜かないを決めるのは患者さんです。
「抜く必要がある」と納得したうえで決断していただけたらと思います。
そのためには分からないことや不安な事等、お気軽にご相談いただけたらと思います。