健康寿命という言葉を聞いたことはありますか?
健康寿命とは、「寝たきりや認知症にならず、自立して生活できている期間」のことです。
近年、この健康寿命を延ばすために健康なお口も重要と考えられるようになってきました。
平均寿命と健康寿命
簡易生命表(令和3年)によると、2021年の日本人の平均寿命は男性が81.47歳、女性が87.57歳でした。
日本は現在、「超高齢社会」と呼ばれるほど高齢者の割合が増え、平均寿命も年々伸びています。
しかし、寿命が延びる=元気な高齢者が多い、というわけではありません。
令和3年(2021年)時点の資料では、平均寿命と健康寿命との間には、男性では約9年、女性では約12年も差があると報告されています。
これは平均値になるため、全ての方が当てはまるわけではないのですが、多くの方が健康上の理由で日常生活が制限される期間があることがわかります。
病気になり行動に制限がかかったり、ベッドの上で長生きすることは誰しもが回避したいと思っていることだと思います。ただ長生きするのではなく、健康に長生きする、つまり「健康寿命を延ばす」ということが大切です。
死亡原因と要介護になる原因疾患
死亡原因 2021年度統計
- 悪性新生物(癌)26.5%
- 心疾患 14.9%
- 老衰 10.6%
- 脳血管疾患 7.3%
- 肺炎 5.1%
- 誤嚥性肺炎 3.4%
2017年度の統計から、誤嚥性肺炎と肺炎を分けて考えるようになりました。
2017年度の統計で誤嚥性肺炎は2.7%でしたが、2021年度では3.4%と増えてきています。
要介護原因 2019年調査
- 認知症約 17.6%
- 脳血管疾患 16.1%
- 高齢による衰弱 12.8%
- 骨折・転倒 12.5%
- 関節疾患 10.8%
となります。
死亡原因の疾患と要介護になる原因には違いがあります。
これは医療技術の向上も関係しています。
近年高い医療技術、救急体制により、脳血管疾患や心疾患は死につながる疾患ではなくなってきています。
しかし、一命をとりとめる事ができても、後遺症を抱え介護を必要とする方が増えてきています。
健康寿命と歯の関係
2012年ある地域の65歳以上の住人を4年間追跡した研究が発表されました。
その研究において、歯が多く残っている人や、残っている歯が少なくても入れ歯やインプラント治療等を行いしっかり咬める人と歯が少なく治療も行っていない人と比較すると、認知症の発症や転倒する危険性が低いという事が分かってきました。
歯がほとんどなく、治療を行っていない人は、歯が20歯以上残っている人や歯がほとんどなくても入れ歯によりかみ合わせが回復している人と比較して、認知症の発症リスクが最大1.9倍にるといわれています。
また、歯が19歯以下で入れ歯を使用していない人は、20歯以上保有している人と比較し、転倒するリスクが2.5倍になると言われています。
また、要介護になる原因の一位の認知症の約7割を占める「アルツハイマー型認知症」に歯周病菌が大きく関与していることがわかってきました。詳しくはこちらをご覧ください。
歯を失う原因
- ・歯周病(37%)
- ・虫歯(29%)
- ・破折(歯が折れる事)(18%)
が主な原因になります。
このうち、「歯の破折」には、
「事故や怪我など大きな力がかかって折れたもの」
も含まれますが、多くは
「過去に大きな虫歯があったために神経を取る処置を行った歯」
と考えられます。
元をたどると、破折の多くも重度の虫歯によるものと考えられます。
「歯周病」と「破折」による抜歯は中高年、「虫歯」はどの年齢層でも多くなっています。
まとめ
2012年の研究結果より、歯を失った後、治療を行い噛む機能の回復をしている方も健康寿命は長くなるということが分かっています。
しかし、咀嚼効率(どのくらい効率よく咀嚼できるかを指標化したもの)はご自身の歯より低くなってしまいます。
(咀嚼効率についてはこちらをご覧ください)
おいしい物を不自由なくいただくにはご自身の歯でいただくのは一番かと思います。
若い方は「健康寿命」を意識することは難しいかと思います。
しかし、若い方こそ歯を失わないようしっかり治療、定期健診を受けていただきたいです。
もちろん中高年の方も治療、定期健診は重要です。
健康に、不自由なく過ごすためにタバコや過度なお酒を控えるなど生活習慣に気を付けることはもちろんですが、歯を失わないようお口の健康にも気を付けていただけたらと思います。