顎骨壊死の予防のために


前回薬剤関連顎骨壊死(MRONJ)についてお話ししました。 

本日は顎骨壊死の予防についてお話ししたいます。 

 

薬剤関連顎骨壊死についておさらい


骨壊死とは感染が骨まで広がり骨が死んでしまうことです。 

薬が関連して起こる骨壊死を薬剤関連顎骨壊死(MRONJ)といいます。 

  • ・骨粗しょう症 
  • ・関節リウマチ 
  • ・乳がん 
  • ・前立腺がん 
  • ・肺がん 
  • ・多発性骨髄腫 

の治療薬でMRONJが起こりやすいことが分かっています。 

 

歯は骨に植立しており、お口の中は常に多くの細菌が存在しています。 

骨が感染しやすい環境であるため、顎骨が他の骨より骨壊死を起こしやすい部位になります。 

  


発症の原因


少し前まで、「抜歯などの外科処置が引き金となって発症する」と考えられていました。 

抜歯後、いつまでたても傷が粘膜で覆われず、顎骨壊死が見られたからです。 

しかし、近年では抜歯をしていなくても顎骨壊死が起こることが分かってきました。 

近年は、「抜歯を必要とするような歯周病や根尖病巣(根の先に膿が溜まる状態)などの存在が顎骨壊死につながる」と考えられています。 

 


予防のために


虫歯や歯周病、根尖病巣の原因は細菌です。 

つまり、

  • 歯科治療でお口の環境を良好に整えること。 
  • ・ご自身によるケアで、環境を維持すること。 
  • ・定期健診を受けること

が大切です。 

 


歯科治療でお口の環境を良好に整える


虫歯、歯周病、根尖病巣などの治療をきちんと受け、感染源をできる限り減らすことが大切です。 

また、合っていない入れ歯もMRONJのリスクになります。 

合っていない入れ歯を使うと、歯茎に傷を作ることがあります。 

その傷から骨へと感染することもあるため、入れ歯の確認も重要です。 

 


ご自身によるケアで、環境を維持する


毎日のご自身でのケアは虫歯、歯周病の予防において最も大切な事です。 

皆さんそれぞれのお口に合ったケア方法をお伝えする歯ブラシ指導を行い、毎日のケアで実践されるのはいかがでしょう? 

 


定期健診を受ける


日々のお手入れを十分に行っていても、汚れを落としきれていないこともあります。 

落としきれなかった汚れは時間がたつと硬くなり歯石となります。 

歯石になってしまうとご自身の歯ブラシでは除去することはできません。 

歯石の除去は機械を使う必要があります。 

定期的にお掃除をしてもらうことが重要です。 

 


MRONJに対する考え方の変化


最近まで抜歯などの外科処置で発症すると考えられていたMRONJですが、原因が歯周病や根の先の膿と分かったことで、骨粗しょう症の治療を行っている方への対応に変化がありました。 

  • ・抜歯は行えない→必要に応じて抜歯を行う 

抜歯が顎骨壊死の原因と考えられていた頃は抜歯は行えませんでした。 

しかし現在は、抜くべき歯を抜かずに残しておくと顎骨壊死になる可能性が高まると考えられています。 

抜歯による顎骨壊死のリスクがないわけではないですが、必要があれば抜歯をするべきと考えられるようになりました。 

また、抜歯に当たって休薬の必要はないと言われています。 

抜歯を行う際は大学病院の口腔外科で行うと安心かと思います。 

 

  • ・顎骨壊死の治療 

顎骨壊死になった時、最近までは手術をすると余計悪くなってしまうと言われていたこともあり行われませんでした。 

現在は手術で治せる病気となってきました。 

しかし、範囲が広い場合や全身疾患などのリスクがある方では手術が行えないこともあります。 

 

  • ・インプラント治療 

インプラント治療とはあごの骨を削り、その部位にインプラント体を埋め込む治療です。 

骨に対して行う手術になるため、ビスホスホネート製剤やデノスマブ製剤を使っている方にはすすめられませんでした。 

しかし、慎重な判断が必要になりますが、現在はインプラント治療ができることもあります。 

ビスホスホネート製剤服用されていて、さらに糖尿病がある方や、ステロイド製剤を服薬されている方はインプラント治療は行えないのでご注意ください。 

 


まとめ


骨粗しょう症の患者さんでお薬を使用している方はMRONJが起きないようにすることが大切です。 

また、薬の種類だけでなく、投薬方法(注射薬なのか、点滴なのか)も重要な情報です。 

そのためには、まず服薬の情報を詳細に歯科医院にお伝えください。