神経を取る処置をした歯に起こること


虫歯が大きくて神経を取る処置(抜髄・ばつずい)を行ったことがある方も多いかと思います。

本日は神経を取る処置「抜髄」についてお話したいと思います。

 


抜髄とは


虫歯が大きくなりすぎて神経の部屋(歯髄)に到達すると、歯髄は虫歯菌に感染してしまいます。

抜髄とは細菌に感染した歯髄を取り除き、これ以上感染が広がらないようにするための治療です。


抜髄の目的


歯髄の細菌感染があると、神経を通じて痛みを感じます。

この状態の時に歯髄を取り除くことで痛みを和らげることができます。

強い痛みのとき抜髄をしなくても、しばらくすると痛みを感じなくなります。

これは感染により歯髄が死んでしまう(壊死する)からです。

壊死した歯髄は感染を拡大させ、根の先、つまり骨の中にまで広がっていきます。

つまり抜髄処置とは

  • ・歯の痛みを和らげるため
  • ・細菌感染をこれ以上拡大させないため

に行われます

 


神経を抜く必要があるとき


① 冷たい物・温かい物にしみるとき

② 噛んだときに痛みを感じる時

③ 何もしていなくてもズキズキと強い痛みがあるとき

④ 虫歯を取り除いている時に神経の部屋に到達したとき

⑤ 虫歯治療後の痛みが長引くとき・強くなる時

虫歯の治療前にしみたり、痛みがない時でも、④、⑤のときは抜髄を行う必要があります。

 


抜髄後の歯に起こりうること


  • ・残っている歯の虫歯

治療後の歯の二次虫歯は抜髄の有無にかかわらず、詰め物や接着剤の劣化により起こりうることです。

しかし、抜髄後の歯は、虫歯による痛みを感じなくなっているため、虫歯の存在に気付きにくくなっています。

気付いた時には虫歯が大きくなりすぎていて、歯として使い続けることが出来ない状態、ということもあります。

 

  • ・根の先(骨の中)の細菌感染

神経の部屋の中で細菌感染が起こり、さらに細菌が増殖し感染が広がると根の先の部分に膿が溜まっていきます。

この状態を根尖性歯周炎と呼びます。

歯髄のある歯のとき、歯髄の中に存在する免疫細胞は細菌に抵抗したり、歯髄と侵入しそうな細菌との間に壁(第二象牙質)を作ったりすることで歯髄を守る働きをします。

抜髄後の歯は当然免疫細胞もいなくなってしまうため、細菌に抵抗することもできず、感染を起こしやすく、骨の中にまで広がってしまいます。

 

〇根尖性歯周炎の症状

・ 疲れたとき、体が弱っている時に歯ぐきが腫れる。

・ 歯ぐきからうみが出てくる。

・ 噛むと違和感・痛みが出る。

このような症状が見られるときは根の治療(感染根管治療)が必要となります。

しかし感染の範囲が広かったり、根の形態が複雑であるほど完治することは難しく、場合によっては抜歯を勧めることもあります。

 

  • ・根が割れる(歯の破折)

歯髄の中には血管も走っています。

歯は、この血管から栄養を貰い、しなやかな硬さを保っていますが、抜髄を行うと血管もなくなるため、栄養を貰う事が出来なくなります。

そのため、抜髄を行うと歯はしなやかさを失い歯が割れやすくなってしまいます。

枯れた木の枝を想像していただくと分かりやすいかと思います。

また、抜髄を行うとき、虫歯をすべて取り除く必要があります。

虫歯をすべて取り除いたことにより残った歯が少なくなることも割れやすい原因の一つとなります。

根が割れてしまうと、その歯は歯として使い続けることは出来なくなります。

抜髄を行った歯は、被せ物で全体を覆うことで割れるリスクを減らす事ができます。

 

  • ・残っている歯の変色

歯髄の中の血液は、「歯へ栄養を送る」以外にも「古い物質を代謝する」ことができます。

抜髄を行うと血液成分や組織の変生物が代謝できなくなります。

古くなったコラーゲン様物質が歯に沈着していくことで褐色~黒色に変色していきます

歯の内部からの変色は歯の表面に行うホワイトニングでは白くすることは難しいです。

 


まとめ


神経の有無によってその歯の寿命は大きく変わります。

それは、「抜髄後の歯に起こりうること」が、その後の歯の寿命に大きく関わってくるものが多いからです。

「自分の歯でしっかり噛める」

そのために虫歯が大きくなる前に治療を行えるよう定期健診に通い専門的なクリーニングとチェックを行う事が重要です。