前回、「抜髄を行った歯に起こること」についてお話をしました。
その中で、歯髄が死んでしまい細菌感染している歯や、抜髄を行った歯の根管内に細菌感染が起こってしまうことがあるとお話しました。
その根の先の感染を「根尖性歯周炎」と呼びます。
本日は「根尖性歯周炎」についてお話したいと思います。
歯髄が死ぬとき
- ・虫歯菌の歯髄への感染
歯髄が虫歯菌に感染すると強い痛みが起こります。
その状態を放置しておくと感染はどんどん進行し、そのうち歯髄が死にます。
死んだ歯髄が腐り、さらに感染が広がっていきます。
- ・大きな虫歯の治療後
大きな虫歯を取り除いた時、歯髄のお部屋に到達していなかったり、痛みを感じない時は歯髄を保存し詰め物を行います。(お薬を入れた上に詰め物を行うこともあります)
つまり、詰め物やお薬のすぐ近くに歯髄があります。
このような時、長い年月をかけ徐々に歯髄が弱っていき最終的に歯髄が死んでしまうことがあります。
この場合、痛みなど自覚症状はほぼありません。
- ・歯の打撲
転倒や、口元に物がぶつかった時など、歯に強い衝撃が加わったときも注意が必要です。
受傷後の痛みが落ち着いたあとしばらくして歯髄が死んでしまうことがあります。
この場合も歯髄が死ぬ間痛みを感じることはないですが、受傷後数か月後に歯の変色などが見られます。
特に小さなお子さんは口元をぶつけたり、転んで歯をぶつけることが多くあります。
気が付くと歯茎が腫れたり、歯の色が変わっていることがよくあります。
このように歯髄が死んでしまった歯の治療は、感染根管治療(初回治療)と呼ばれ、抜髄と治療の流れはほぼ同じです。
抜髄後の感染
- ・唾液の混入
抜髄の治療中、細菌を含んでいる唾液が根の中に侵入すると、その細菌が感染の原因となります。
ラバーダムというゴムのシートを使用することで唾液の侵入を防ぐことができます。
- ・根管内の汚れ
根の先の湾曲や枝分かれなどがあると神経のお部屋の中の汚れを完全に取り切るのは難しいことです。
- ・根管の見落とし
根管は枝分かれしています。
また、同じ部位の歯でも神経の部屋の形、枝分かれの数が違うこともあります。
そのような時に、未治療の根管があると感染の原因となります。
- ・治療を中断してしまう
根管治療中に長期で中断してしまうと、感染の原因となります。
仮の蓋が外れてしまうと、細菌を含んでいる唾液が根の中に侵入してしまいます。
また、中断すると、根の中が虫歯になります。
この部分は虫歯の進行も早いため、抜歯になってしまうこともあります。
抜髄を行ったことがある歯の治療は再根管治療となります。
治療の方法は抜髄や初回の感染根管治療とほぼかわりませんが、大きく違うところは以前詰めた根の中のお薬の除去を行ってから根管の中を綺麗にしていくことです。
このお薬をしっかりとりきる必要があるため、治療回数が多くなります。
根尖性歯周炎の症状
根尖性歯周炎には「慢性根尖性歯周炎」と「急性根尖性歯周炎」に分ける事ができます。
慢性の根尖性歯周炎は強い症状が出ることが少なく、疲れたときや体調不良のときに不調を感じます。
疲れや、体調不良で免疫力が低下し感染を抑え込めなくなると、慢性根尖性歯周炎が急性根尖性歯周炎へと転化し痛みが悪化します。
急性の根尖性歯周炎は、痛みや腫れなど強い症状が出てきます。
- ・歯肉を押すと違和感がある(慢性期)
- ・疲れたとき、体調が悪いときに歯の付け根にうずき、鈍い痛みがでる(慢性期)
- ・物を噛むときに違和感がある(慢性期)
- ・根の先端付近の歯茎が腫れたり、膿が出てくる(慢性期)
- ・何もしていなくてもズキズキ痛む(急性期)
- ・大きく腫れる(急性期)
まとめ
抜髄を行った歯が根尖性歯周炎になる可能性は常にあります。
抜髄を行ったことがある方は定期的にレントゲン写真を撮影しチェックを行うことが大切です。
しかし、一番重要な事は、「抜髄を行わない」ことです。
虫歯を大きくなるまで放置せず、しっかり治療することが大切です。