抜歯後に治療を行わないと…


前回は「抜歯後の治療」についてお話しました。

今回は抜歯後や折れた歯を放っておいた場合についてお話ししたいと思います。

目次

  1. 歯がなくなった後、長期間放っておくことで起こる変化
  2. 歯が移動することによっておこる悪影響
  3. 歯が移動したあと、そのまま欠損部の治療をする時の問題点
  4. 移動した歯への処置
  5. まとめ

 


目次

1.歯がなくなった後、長期間放っておくことで起こる変化


歯は周りの歯と支え合うことでしっかりと咬むことができます。一本でも歯がなくなり、スペースができるとそのスペースを補うように歯が移動します。

 

図のように下の歯の奥から二番目の歯が抜けたとき、上の歯は下に下がり(挺出といいます。)、隣の歯は抜けたスペースに倒れるように移動し、スペースを補おうとします。この様な移動は少しずつ起こります。その為、気付かないうちに大きく傾き、抜いたスペースが狭くなっています。

 


2.歯が移動することによっておこる悪影響


歯が動くことによって、機能面、身体面、審美面と多岐にわたる変化が起こりえます。

①機能面への悪影響

・嚙み合わせが崩壊

上の歯に対して、下の歯が理想的な位置にあり、下の歯がスムーズに動ける状態が理想の嚙み合わせです。この時の上下的な理想的な位置関係とは上の歯1本に対して下の歯2本で噛み合う状態です。

しかし歯が移動することで嚙み合わせは狂います。

→噛み合わせの変化で顎も変化が起こり、、あごの痛みなど顎関節症のリスクが上がります

・歯と歯の隙間が広がり食べ物が詰まりやすくなる。

倒れ方が大きいと、歯ブラシや歯間ブラシを使って上手に歯磨きができなくなります。

→虫歯、歯周病のリスクが上がります

・噛む力の低下

歯は噛む面からまっすぐな力に強いです。斜めになった歯は、しっかり噛めません。噛む力が低下することで「噛みにくい」と感じるようになり、反対側の奥歯で噛むことが増えます。

→知覚過敏や歯の揺れ・痛みの原因となることがあります。また、歯が割れることもあります。

・発音がしにくくなる

歯のない部分から空気が抜けることで発音が不明瞭になります。特に前歯がなくなったときなどに顕著です。

 

②身体面への悪影響

・姿勢の悪化

噛み合わせが変わることで顎、頭の位置も変わることがあります。頭の位置に偏りがあるとその偏りを補正するために肩や首の筋肉が過剰に働きます。姿勢の悪さにもつながります。姿勢が悪くなると、肩こりや腰痛など、全身的な不調の原因になることもあります。

・胃腸の不調

食べ物をしっかり咀嚼できなくなることで、消化器官は消化の負担が増え、不調に感じる事があります。

③審美面への悪影響

・歯が移動することで歯並びが悪化します。

・歯茎の位置が下がる

根から伝わる噛む力を骨に伝えています。その力による刺激を受けることで骨量を保っています。抜くことで根がなくなりその部分の骨は刺激がなくなります。そのため、骨量が減っていきます。歯槽骨の周りにある歯茎の位置も変化していきます。

・顔の輪郭の変化、しわの増加

歯を失い、骨の減少により頬がこけたような印象をうけることがあります

また、前歯の欠損の場合、口元の張りが少なくなり、皺が深くなります。

 


3.歯が移動したあと、そのまま欠損部の治療をする時の問題点


                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                              ①ブリッジの場合

ブリッジとは両隣の歯を大きく削り土台にして、ダミーの歯を支える被せ物です。

傾きが大きい歯は、まっすぐに生えている歯より、大きく削る必要があります。そのため、神経をとる可能性が高くなります。

先ほどもお話しましたが、歯は噛む面からのまっすぐな力に強いです。傾いた歯に被せ物を行っても、噛む際は歯に対して斜めの力がかかります。

神経をとったことで脆くなり割れやすい歯に、さらに斜めに力が加わることで折れるリスクが上がります。

 

②インプラントの場合

隣の歯が倒れているため、歯を入れるスペースが狭いとインプラント手術ができません。矯正を行ったり、動いてしまった歯の位置を補正するために歯を削る必要があります。

 

③上下的なスペース不足

初めの絵にあるように、抜けた歯の反対側の歯もスペースを埋めようと、歯茎から出てくるように移動します。その為、時間が経過すると、噛んだ時に上下的なスペース(クリアランス)が減ります。

どの治療でも、十分なクリアランスが確保できないと、治療ができない場合があります。改善のためには矯正や歯を削る必要があります。

 

この様に、移動した後そのままの状態で治療を開始すると、問題点や、今後の不安な要素があります。

 


4.移動した歯への処置


3.でお話したようにならないようにするために、治療を開始する前に、移動した歯を部分矯正で元に戻す方法があります。

歯の位置を元に戻すため、どの治療法も問題なく行う事ができます。

ただし、矯正に6ヶ月ほど、場合によっては1年近く時間がかかります。矯正終了後欠損部に対する治療が行えるようになるため、治療期間は長くなります。

また、矯正治療を視野に入れることで各々の治療の問題点を解決できるだけでなく治療の幅を広げる事ができます。例えば、全顎的な矯正を用いて、抜いたスペースを利用してきれいな歯並びにすることが可能な事があります。他にも、抜けたところの奥の歯を手前の歯に近づけてスペースを埋めることが可能な場合もあります。矯正は見た目の改善はもちろんですが、歯並びを良くすることで虫歯、歯周病のリスクの改善、予防になります。

 


5.まとめ


たとえ一本だとしても無くなると必ず歯は移動し、他の歯や体へ悪影響となります。

また、歯がなくなった後すぐに治療を行えば可能な治療も、長期間放置することで、出来なくなることや、リスクが新たに出てきます。

長期間放置し歯が移動した場合でも、矯正治療を行うことで問題は解決できます。しかし、治療期間や体や歯への負担を考えると歯の移動が起こる前に治療を行うようにしていただくことが一番です。