睡眠時無呼吸症候群の合併症について


量、質、共に満たされた睡眠は健康の為に不可欠なものです。

睡眠時無呼吸症候群(SAS)によって適切な睡眠がとれていないと生活習慣病の発症や重症化にもつながります。

SASはさまざまな生活習慣病と共通の危険因子が存在します。

また、心血管系疾患発症の様々な危険因子と共通しています。

そのことから「生活習慣病そのもの」との認識をするべきという考えもあります。

本日は睡眠時無呼吸症候群の合併症についてお話ししたいと思います。

 

(SASの原因、検査についてはこちらをご覧ください。)

 

高血圧


SASの患者のうち約70%の方に高血圧の合併多く見られたという報告があります。

また、SASが重傷であればあるほど高血圧合併の頻度が多いことも分かっています。

アメリカでの研究で、SASを有する患者を重度と経度で分けたとき、重度の群が1.4倍高血圧の合併が多いという報告がありました。

また、睡眠時の低酸素血症は、動脈硬化のリスクの1つになる可能性があるとも考えられています。

 


虚血性心疾患


虚血性心疾患とは、心臓の血管が細くなりおこる病気のことで、心筋梗塞や狭心症などが含まれます。

血管が細くする原因として多いのが動脈硬化になります。

SASの患者の虚血性心疾患の発症リスクは健常者と比べると1.2倍~6.9倍にもなるとの報告があります。

狭心症患者の40%弱の患者にSASが認められています。

また、SASの患者の35~40%に虚血性心疾患が合併するとされています。

両者の関連性の詳細はまだ不明な部分が多いですが、要因の一つとして、頻回の覚醒や低酸素状態による交感神経系の活動増強が考えられています。

 


不整脈


脈とは本来一定のリズムで打たれます。

不整脈とは、脈がゆっくり打つ(徐脈)、速く打つ(頻脈)、または不規則に打つ状態(期外収縮)を指します。

SASの方は無呼吸時の徐脈と無呼吸後の過呼吸時の頻脈を繰り返します。

海外で行われた調査ではSASの患者400人のうち、11%に洞停止(いわゆる心停止)、心室頻拍(死に至る重篤な不整脈のひとつ)が3%に見られたとのことです。

 


脳血管障害


現時点で、SASと脳血管障害の直接的な原因についてはまだ不明な点が多いです。

しかし、SASの重症例では脳卒中・脳梗塞発症リスクが3.3倍になると報告があります。

また、脳卒中・脳梗塞の発症後の機能回復にも影響を及ぼすと言われています。

SASを伴う脳卒中患者とSASを伴わない脳卒中患者の回復経過を比較した研究で、SASを罹患している群の方が1年後の死亡率が高いと報告がありました。

また、日常生活動作の評価においてもSASを伴っていると評価が低いことが報告されました。

 


糖尿病


SASと糖尿病の合併はおよそ10%にみられ、SASの重症化とともに合併率は増えます。

肥満の方はインスリン抵抗性が上がっており、糖尿病になりやすくなります。

SASの方には肥満が多いことから糖尿病になりやすいと考えられています。

 


多血症


多血症とは、全身に酸素を運ぶ赤血球が異常に増えてしまう疾患です。

赤血球が増えると血液が濃くなり、ドロドロと流れが悪くなります。

すると、血管内に血の塊(血栓)ができやすくなり、心筋梗塞や脳梗塞の原因となります。

SASにおける多血症の原因は2つあることが分かっています。

  • ・夜間の尿量の増加

無呼吸になることで心臓への負担が大きくなります。

心臓の働きを保つためにANPというホルモンが分泌されます。

ANPは強い利尿作用があるホルモンのため、夜間尿が増え、脱水になり結果的に血液が濃くなります。

  • ・赤血球の増加

繰り返す低酸素状態が続くと、赤血球の生産を促すエリスロポエチンというホルモンが増えます。

エリスロポエチンの働きによって赤血球数が増え多血症になります。

原因不明の多血症患者の中にSASのある方が多く認められました。

 


突然死


フィンランドでSASと深い関係にあるいびきと突然死の関係性を調べた研究があります。

460例の突然死について調べたところ「常時いびきをかく人」が85人、「よくいびきをかく人」が88人で、37.6%がいびきをかく人でした。

日本でも2000年に294名のSAS患者を5年間追跡調査をした結果が発表されました。

その調査によると5年間で17名(5.8%)が亡くなっており、そのうち8名は心筋梗塞や脳梗塞による突然死が原因でした。

また、多くの方が起床後数時間以内に亡くなった、とのことです。

 


まとめ


SASが重症になればなるほど、合併症のリスク、重症度は高くなります。

また、上記の合併症のほかに、うつ病などの精神疾患や日中の眠気による交通事故のリスクの増加もあります。

いびきや日中の眠気など、気になる症状がある方はまずは専門の医療機関に相談してみてください。

そして必要に応じて適した治療を受ける事が大切ではないでしょうか。

治療法については次回お話ししたいと思います。